突破口を拓くアイデアはものすごく地味な積み重ね

葉っぱビジネスで有名な徳島県上勝町にあるいろどりという会社があります。料亭にある葉っぱ(刺し身から色々なものに添える)ものを、まさに売ってるんですね。

この事例は知っていたのですが、この取り組み自体は苦労して町民を説得してこぎつけた施策は普通に失敗していたんですね。そこからリカバリーということでの施策が今回の注目ポイントです。

つまり、失敗→挽回→成功みたいなことを言いたいのでなく、失敗→挽回というところで、知恵を絞ってまたやる。このまたやるという、何度でもやるという感覚は、まさに地味な積み重ねではないかなというところです。

仕入れ業者には情報は出さないがお客なら出す

ちきりん氏の本に面白い記述があって、そこからの気づきです。

 苦労が続いていたある日、横石氏は画期的な方法を思いつきます。それは、業者としての厨房の話を聞きに行くのではなく、客として料理店を訪れ、食事をしながら話を聞くという方法です。

 この方法は、大成功します。確かに食事客ならごく自然に「この鯛はどこでとれたものですか?」「この器はどちらの?」「このつまものは?」と尋ねることができます。店側も丁寧に説明してくれるでしょう。

「マーケット感覚を身につけよう」、さいごにの章より引用

横石氏は、この上勝町の農協の営農指導員という人で、主人公的な人です。

さて、この方法は、ちきりん氏の本にもあるように、視点を変える、そのもの=ここではつまものの価値はどこにあるか?という顧客視点といってもいい。また、ここでは「業者」さんなら間に合っているからといって別に営業を受けないでしょう。しかし、正規の客なら普通の会話として「つまもの」の情報が仕入れられると。まあ、どこまで聞けたかはテクニックはあるんでしょうけど、客だから無下に断れないってのもあるかなと(笑)

初期のアイデアは粗くて当然

この手のコトは実は、当事者で、つまりあなたがその場にいたり、同じような失敗をしたり、上手く突破口が見えない時にどう動くかに現れる気がします。

実際にすぐ気づけるかどうかもあるし、違う行動やアイデアを試せるかというのもありますよね。

ここで、アイデアとして、つまものを売ればいいという初期のアイデアは実は「料理屋で若い女性客達がつまものをみて、ワイワイと楽しく語らっている」のを見たということなんですよね。

だからこの初期のアイデアを、町民をくどいてなんとか実行したけど、普通に売れず赤字だったというわけです。そこからどうしていくか?

そう。料亭客の視点です。そこでどう出されるかの解像度が低い、またはないといっていいので失敗したんだと。

それに気づいた横石さんは、もっと「ツマモノ」のことを学ばなくてはならない、と思ったが、こうしたことは料亭にとっては門外不出。お客さんになって聞くしかありません。そこで、自費で料亭に通いづめ、朝は市場で営業、夜は料亭で勉強という日々を過ごすことになってのです。食べ過ぎで20キロ太り、痛風になり入院することもあったが、「ツマモノ」に対する理解を深め、本当に「欲しいツマモノ」を供給できるようにしていったのです。

上勝町の横石知二さん「葉っぱビジネス」の舞台づくりで地域にいろどりを

20キロ太るくらいってかなりの量ですよね。あと頻繁に通って、情報を得つつ、深めていったと。これってめちゃくちゃ地味じゃないかって僕は思ったんですが、あなたはどうですか?

僕はこういう積み重ね「しか」とはいわないのですが、こういうことがないのに、いきなり物事が進むってないのだと考えています。そうでないことは「ラッキー」くらいで、再現性がないといってもいい。

気づきを自分で負わなくても良い

しかもおそらくですが横石さん自体がチャレンジした簡素なパッケージは売れなかった、売れても赤字になったということですが、ではどうしたか?

どうしたら売れるのだろうか、何が足りないのか。悩み、出口が見つからないとき、知人からこんなアドバイスをいただいたのです。「あんたは、これを使っている現場を見たことがあるの?料亭で使われているものなので、現場を見に行かなければ駄目だよ」と。

買い手のニーズを把握した葉っぱビジネス 成功体験が賛同者を集める

まさにここでは「知人」からのアドバイスであって、おそらくビジネスや起業経験がない横石さんにとっては、これが大きなヒントとなるわけです。

それが先の料亭通いにつながります。とはいえ、これ市場調査なので、遊びに行くわけではないんですけどね(笑)

ここでいいたいのは、もちろん悩み考えることが大事とはいえ、自分で気づくというよりも、アドバイスがヒントになったといっていい。となれば、自分で気づくのもいいけれど、誰かのアドバイスや視点で気づければそれもいいってことですよね。

顧客解像度を高めることで成功した

結果的に、料亭に通い詰めてつまものの情報を得つつ、顧客視点の(ここでは客もですが、どちらかといえば料亭側の板前さんですよね)欲しいつまものが分かってきたと。ならば、それを元にパッケージから、商品から、種類から、値段からいけるのではないかと。

そういう形こそ「マーケティング」といって思いますが、ここから売れるようになっていったというわけですね。

この顧客解像度は、ちきりん氏的にいえばマーケット感覚であり、儲かる発想の鳥井さん的にいえば「マーケットを知る」であり、僕でいえば「誰にとって価値があるか」、または最近でハマってるのは「ジョブ理論」なので、どんなジョブを解決しているか。ニーズの細かいやつって感じですよね。

おわりに

この事例では色々なことがわかりますが、アイデア一発でどーんといける例はもちろんあれど、多くは何発も突破しないといけないんですよね。

気になる人は調べてもらえればいいのですが、ざっと確認するだけでも、

  • 町自体が事業が衰退していてまずいけど変えようという雰囲気がない(よそ者にになにが分かるかってやつですね)
  • 葉っぱビジネスのアイデアを提示しても誰もやってくれない。「プライドがあってそこらへんにある葉っぱを売るなんて恥ずかしい」ってことですね。
  • 一人ずつ説得して協力者で葉っぱを集めて売ったが売れない
  • 情報収集をしようとしても、料亭では門前払い

まあ、こういう失敗というか、うまくいかないことが一杯あると。リアルにそういうことをイメージ出来るなら全然オッケーです。一方でこういうことを全くイメージできないと、アイデア→何も障害がなく→成功する(笑)という夢物語ですが思い描いてしまうんですね。それを否定しないですが、そうはならないというだけですね。

結局それぞれの課題を、少しずつ説得するなり、試して突破していく。そうやってアイデアってどちらかというと、現実の課題に対して離れたところでなくて、めちゃくちゃリアルにまるでそこに「もの」があるかのように「アイデア」としてあるんですね。概念としてあるというか。そこが僕は好きですね。

普通に考えたり、固定概念として考えるとうまくいかないことはざらにあります。そういう時こそ、視点を変える、顧客解像度を上げる、違う視点から何かやってみる(ハマっている人はハマっていることは分かるはずなので)ことで突破口が見えるかもしれません。

筆者プロフィール

シゴトクリエイター 大橋 弘宜
シゴトクリエイター 大橋 弘宜
「シゴクリ」運営者。アイデアの力でお客様に貢献するゼロイチ大好きアイデアマン。ビジネスアイデア相談実績等は200超を超える。好きな言葉は三方良し。詳しい自己紹介仕事実績も合わせてご覧ください。お仕事メニューお問い合わせはお気軽にどうぞ。

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