ワンコインプレスリリースサービス「みんなのPR」を弔う

「みんなのPR」というプレスリリース代行サービスがありました。1年ちょっとでクローズしたことになるのですが、ここから学べることを書いてみます。

みんなのPRとは

一言でいえば、ワンコイン500円で出来るプレスリリースサービスです。

500円からはじめるPR活動~「ワンコインプレスリリース」が可能にするもの~で詳しく書かれています。

仮説と課題

上の記事から考えると、このサービスの特徴は、価格帯を低くして、中小企業向けで、PCがなくてスマホで出来る簡易さを売りにしたものとなりそうです。

テスト期間で、そもそも既存サービス(月3万円)より安いところでやってみようとしても、対象とする中小企業経営者からは不評だったということです。その手応えから、500円でどんどん投げ込んでリリースしていく循環を作ろうとする狙いはよくわかります。

一方で、これを試した結果、9ヶ月で1000社を超えるユーザーを獲得したようですが、2018年3月末つまりリリース1年でクローズとなっています。≪みんなのPRサービス停止のお知らせ≫

結果から考えられること

ターゲットにとって価値が薄いと思われた

仮説は悪くないと思っていて、というよりも仮説がないとできないわけですしね。新たなサービスというのも。

その上で、価値として、ターゲットである中小企業はプレスリリースをしてないか、しているとしても「投資」をしてやるという価値がなかったということが結果論ですが言えそうです。そもそも企業が500円を出して効果を求めるという投資感覚はどこでバランスを取るかとなりそうです。個人であっても何を求めるかになるんですよね。

プレスリリース自体はリリースして意味があるのでなく、メディアや記事媒体、つまり記者が興味を持つことで、取り上げてもらう広報活動です。極端な話、500円でも、月に20本出して1万円かかるわけですが、それで一件も記事にならないとしましょう。無駄だと思うか投資と思えるかは、「お客」次第なので、ユーザー数以外の数値は分からないのでそこまでリピートまたはリリース数につながらなかったと言えそうです。

実際に価格も500円なので、これでリリース代行や校正、修正などをやるとまあ辛くなていって、かつ記者媒体に出す時にそこそこ記者が見たくなるものでないと記者側も受付ないでしょう。よって、ある種運営会社からすればマッチングとなるわけです。何も広報マッチしないものは、中小企業も媒体側も価値なしとなり、お互い関心がなくなるわけですね。

よって、戦術としては、入口としてワンコインサービスを。その後に付加価値が高いものや高単価のものを提示していくとなりますが、一方で入口が良い満足にならなければ次につながらないとなります。

インパクトになり得なかった

結果論ですが、インパクトはおそらく1000社ではなく、企業数200万社あるとしても、数万は欲しいところでしょう。多くが中小企業ですから、中小企業という属性のターゲットは粗いです。よって、中小企業でプレスリリースを出して投資効果を感じているか、または出そうと検討しているところでなんとかという話です。

インパクトは1-3万か分かりませんが、法人ユーザーをそれほど獲得するのはなかなかの難しさだと思います。むしろ、数百社から1000社規模のサービスで成り立つビジネスとするイメージです。個人なら数万は必須かもしれませんが、ここではあくまでBtoB的なイメージがありました。

インパクトの担保は、破壊的な価格です。試みは評価できるのですが、それがマッチしないならば何もできないということですよね。

プレスするものがなかった

中小企業の多くは社長単独か家族経営に近いものが多いと想定すると、ウチの会社でなにか言えることはーとなったり、サービス特化や領域特化で「リリース」するものがないか、それをうまいところリリース文として作成できるまでいかなかったかもしれません。

実際にみんなのPRがどこまでやるかというと、精査や修正がきっちりやっていくと、「御社のコアバリューは?」みたいなことになり、「広報で必要なものは・・・」と広報コンサルや事業経営に突っ込んだ話になります。そもそも商品として出しているが「売りがあるかわからない」とかもありそうです。

つまりターゲットがやってみてもいいかくらいで特段やるネタがないと、作るための教育、または引き受けたらより負担が運営側でかかるので、結構辛いという構図になります。

それを避けるには、サービスがあるから出そうというのではなく、効率化したり、すでにあるものを改善して「作業効率を5から1にしました」くらいのでどうかというところです。

実際にプレスリリースが万能ではないですし、そのリリース自体が記事となって広報となるには、新規性や社会性や客観性がある程度ないと取り上げてくれないでしょう。そこをやれば確かにリリースされてメディアに掲載されるかもしれません。しかしそこをどのコストをかけてやるか。これが見合わなかったと言えそうです。

1年という期間は最適かも

撤退期間が最適というかは分かりませんが、伸び率が悪いのであれば撤退は賢いと考えます。実際に好循環で回っていくのであればいいのですが、ユーザー数自体は評価できてもそこから伸びるか、マネタイズするか、他のアイデアや展開が描けなかったかもしれません。

だらだら続けても意味がないですし、とはいえどこで損切をするかは考え方次第ですよね。僕は最適だと思いました。例えばターゲットの中小企業が仮説としては、行動変容するかです。これがないとおそらくきつく、初期のユーザーでわりとコミットしてくれる人でその変化がないならきついですよね。

メディアに掲載される価値はなんだろうか

最後に、そもそもプレスリリースの価値について考えてみます。実際には広告と違って掲載が保証されないがその分考える必要があります。言い方は悪いですがお金をかけない分、考えることが求められます。時代や社会の流れに合わせたりとなるのですが、一方で情報としてはもはや溢れかえっています。

つまり、自社SNSやサイト運用が良いとはいえないのですが、そちらのほうがダイレクトに届けられるほうが時代の流れかもしれません。一方でメディアの客観性が揺らぎまくっているところですが、プロの記者がいるわけでその取材力や物事を取り上げる力を評価しないというのも乱暴でしょう。よって、バランス良く付き合うということになります。

しかし、情報過剰から価値が相対的に薄まっていき、結局、ネットでもなんでもどんな会社がどのような意図で何を考えているか。Googleのページランクではないですが、結局誰がが問われるのかなと思います。

プレスリリースはもちろん誰がどんなことをどのようにしたが書かれるわけですが、それを見るのは記者でしょう。その記者や情報を見る人が、どう感じるか読み取るか。実際にプレスリリースも情報の公的な一部でしかなく、他にもあるわけですよね。そうなると、その情報掲載における投資をどう考えるか、または掲載されない中でどうリスクを判断するか。

掲載されたから売れるわけでもないでしょう。掲載されないからだめなわけでもないでしょう。となると、手間になって意味がないかなとなっていくことも多そうです。

一昔前なら客観性やメディアは強い、新聞やテレビは強いという感じもありました。今もなくなったとは言えませんが、とはいえ自分で取捨選択ができたり、自主的に見えるところで受動的なメディアは疲れてくるし、アテンションとして注目を集めるのもやはり疲れてしまう。世の中には出てこなくても口コミや地域や小さいコミュニケーションや信頼で成り立つ仕事やビジネスも様々にあります。そういうスケールや尺度ではやはりといってはなんですが、プレスリリースはやはり大げさであったり、大きすぎるのかもしれないなと感じました。

プレスリリース系のサービスで成功しているというのはあまり聴いたことがないのですが、おそらく数とコストと価値のバランスが取りづらいため、このようなポータル系やマッチング系は考える人は多いかもしれませんが、うまくいかないという轍を踏まえつつ、チャレンジするのが面白いかもしれません。

筆者プロフィール

シゴトクリエイター 大橋 弘宜
シゴトクリエイター 大橋 弘宜
「シゴクリ」運営者。アイデアの力でお客様に貢献するゼロイチ大好きアイデアマン。ビジネスアイデア相談実績等は200超を超える。好きな言葉は三方良し。詳しい自己紹介仕事実績も合わせてご覧ください。お仕事メニューお問い合わせはお気軽にどうぞ。

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