観察ノック15本目:マーケティング意図を思い切りだすギャップ

企画やマーケティングというのは、意図を隠すわけではないのですが、意図を持って行うわけです。ちなみにこの意図がなく行うことは「偶然」となります。

では、この企画側の意図はどこまで伝えるのか。これは正解はないのですが、例えば究極的には商品のマーケティングは「買ってね!」です(笑)しかし、それで買う人は稀でしょう。「買ってね!」というメッセージを伝えて「買う」人がいれば誰も商売で苦労はしません。とはいえ「買ってね!」で買った人がいても、「その手法」なりが飽きられる、客側が見透かすので効かなくなります。というのは、ノウハウだけでなく何でもありそうですよね。

少し長くなりましたが、コンビニ店頭で見かけた店員さんのPOPが面白く、今回はそこからマーケティングや企画の意図をどこまで出すかについて考えてみます。

観察内容

コンビニで飲み物を買おうとしたらコンビニらしからぬ?手書きのメッセージ。思わず見てしまったというところです。

内容的には、朝の時間帯に買うと30円引きクーポンが貰えるよというものです。またそのクーポンは夜でしか使えないという意図から、最後が特徴的です。というか違和感を覚えたんですね。

「朝のお客さんを夜にも来てもらう狙い!!」

あなたはどう思いますか?この狙いを書いてしまったらイケないと思いますか?それともあえて書いたかどうか。なかなかおもしろい視点ですよね。

ちなみに、僕は当初の飲み物は買いましたが、コンビニという性質上なかなかいけない立地ならあえて行こうとはしないという選択をしましたので、このPOPは面白いが効用はどこまであるかは不明というところですね。

マーケティングの意図性の開示

難しく見出しを書いていますが、要するに「どこまで企画意図を出すか」ということですね。

企画側の都合は無視され、客の利便性に合うかどうか

整理すると、「この店舗では朝のお客さんと夜のお客さんが別々となっているので、朝客→夜客でリピートして欲しい」ということを、上のPOPでお知らせしています。

一般的に、朝クーポンが夜しか使えない(表現が紛らわしいですが)なら、確かに朝客も「夜なら割引なんだ」といって、来る可能性もあります。ただ、コンビニで朝使うところを夜使うということは、完全に生活動線にあると言えますよね。つまり、通勤通学だったりして朝コンビニ→出社や登校→夜コンビニというところで、同じコンビニを使うことを想定しています。

マーケティングとしては、朝客があまり夜に来てないから意図したと言えます。類似としては、飲食店がランチで認知度上げて夜に来るというのがありますが、これ効果があるかは不明です。なぜならランチ価格帯は安くなりコスパが良いです。しかし夜はディナー等本格的となると価格帯があがります。むしろ、夜で来れないから昼来るという結果なんですね。

お客からすれば結果の昼が、店(企画側)からすれば、要因や原因として、そこから夜ということになっています。もちろん、昼ランチが美味しいから夜も来ようという人はいないわけではないでしょう。ですが、動くかというとかなり怪しいと考えています。

ポイントはこの仮説自体(昼客を夜客として誘導する)という狙いはいいんですよね。ただ、なぜそうできるか、またはどのようにするか、というところの見極めが重要となります。具体的にはデータでもいいですし、根拠でもいいです。もちろんなくても施策としてやってみるのもいいんです。ただ、検証出来なければ適当な打ち手となり散漫感が出てくるのできちっと考えることがポイントという意味です。

具体的には、上のコンビニのケースであれば、POSデータがあるのか(本部等から供給されているかは不明です)、そこから統計的なデータとして言えることがある(例えば年代別で全然利用客層が異なるとか)ならありです。ただ、それは店の都合ですよね。細かくいえば、店の都合はおいておいて、朝客がクーポン30円引きであれば夜でも使いたいかどうかなんですよね。つまり選択肢として30円引きを覚えておいて、使いたいというところで実際に使うところまでいくか。これは本当はやってみないと分からないです。

ただ僕としてはクーポン割引とかほとんど使わないので(面倒だったり、縛られるのが嫌なので)ここでのクーポン客イメージはあまりわきません。ただ、割引なら使う人は一定数いるはずです。とはいえそれらの人は割引だから来るので持続性は弱いでしょう。これはよくある話ですよね。

意図を出すと共感されるわけではない

SNSではレアケースだと捉えるのが無難ですが、コンビニでも誤発注での大量発注で救うために、売れるというケースがあります。SNSでバズるようなものですよね。これも注意が必要で、そもそもミスする仕組みになっているのはどうか、仮にさばけたら「ある種お互い様、次は気をつけてね」くらいの着地なのですが、全く違う店や業種であると、SNS上では「またか」となります。もちろん個別の話があってもですよね。これはもう仕方がないですよね。

それはいいとして、今回は意図を開示したわけですが、それによって客が動くかです。正解はないというか、僕が考えるに、「やはりあまり効用はない」という考えです。以下理由を示します。

1つは、共感を求めているのではないか、ある種のSNSでの同情などに近いですが、「困ったら助けて!」は美しいです。一方でそうあるべきとは分かっていてもやるかは別ですよね。つまり「朝客を夜客にしたい」は、客側からは押し付けられるのであって、「そうしたいならそうしよう」とはならないですよね。だから、クーポンがトリガーとなります。それだけですよね。意図性はクーポンの前には勝てないというか、プラスになるかは微妙です。

もっといえば、「分かる」が「とはいえ、それで夜使いたいかまではいかない」し、「客数や売上を上げる」などの商売や経営は店側の工夫でもあって、その一つ程度となります。ネタとしては面白いですが、というところですよね。

2つ目に、例えば出版などで本でこの本はこういう対象者にこうなって欲しいと思って書きましたというのはよくあります。このパターンであれば、もっと説明をすべきとなりなかなか表現が難しいです。つまりターゲットをもっと絞り込んでその人に届けるなら、多分いけるかもということです。

具体的には、「朝の時間帯に、黄色のアイテムを持ってる人はラッキーDAY!お得なクーポンを差し上げます。(なくても朝時間帯に来てくれたらみんなにあげます)」だと違ってきますよね。ただこの言い回しがOKなのかは吟味されるところで、優良誤認みたいなものに入るかというところですよね。これがオッケーでも、意図を開示するかですよね。つまり、「朝時間帯の人が夜に来るようなおまじないです」とかでも表現を変えてもこの意図はあまり影響がない気がします。

もっといえば、意図性を出してもその意図が共感できるものでなければ、意味がないというところでしょうか。ここでは客は動かないということです。困ってるのでお金くださいは物乞いとなりえますが、同情してお金を出すかはあなた次第です。状態を説明したり、意図を説明するのは、企画的には内情を吐露するのに近く、あまりおすすめできません。

とはいえ、これらも正解がないので、企画の意図性の開示が絶対駄目とか、NGというわけでもないでしょう。むしろ例えばナンパなどにおいて、意図性?を開示することで、怪しくないということも示すことができるかもしれません。というわけで、どこまで出すかは多分企画と企画側や状況や環境次第となりそうです。

他の留意点

考えていて思ったのは、当然企画を実施する提案書や企画書においては意図は必須ですし、説明がないとなんでやるかの論理が出てこないでしょう。例えば店員が店長に「こうやってPOP書けばいいのでは?」という提案では「意図」は必須でしょう。店長が判断できないからですよね。そういうオペレーションや承認フローがあるかはおいておいて、推測です。

ただ、このPOP自体の意図を内部スタッフではなく、外部のお客が見る意味があるかどうかということでは、意味がないのではないかという話でした。

マーケティングとは誘導ではない

意図性というか、意図や狙いは、どこまで書いたらいいかはわりと正解はないと書きました。

例えばイベントやワークショップ企画をしてきた中で、企画書とかは書いてまとめて、その意図や狙い、とくに参加者がどうなっているかはイメージしていくわけです。それはいいのですが、「このイベントに参加すると、こういった視点が身につく」というのは書けるのですが、これは言うは易く行うは難しですよね。

だから企画としては「どうすると参加者がある視点を身につけられるか」を説明する必要があります。説明とは、マニュアル的な意味でなく、アイデアが求められ、かつそのアイデアを形にできることが求められます。企画書とはそういう意味で「アイデアの実現手引」といってもいいですし、「手引を見て実現できる確率が高い」ものといっていいです。もっといえば「再現性が高いガイド」といってもいいでしょう。ガイドがあるのではなく、そのガイドを作るのですから創造性があるともいえます。もちろん、どのような企画をどのようにやるかで全く「創造性」のかけらのないこともあるわけですが、それはそれで、企画書や企画とは別問題です。

この時「参加者に必要なXという視点を学んでもらうのが狙いです」と書いていても、「ふーんそうなんだね」くらいで、そのXの重要性がある程度伝えられること、または理解ができそうなこと、またはイベントに参加してみたくなることにつながるかどうかとなり、「意図」「狙い」は書いてあってもいいのですが、コンビニで商品を買う多くの客なのか、イベントに参加する少数のターゲティングされた参加者なのかで違いはあります。ですが、どんな意図をいってもそれを感じてもらったり、そのように「ついやってしまう」であったり、「そのとおりだと共感してもらって動く」ことが企画やマーケティングと言えます。

じれったいかもしれませんが、そもそも、人が動くということを簡単に考えている人はきついわけです。つまり、なぜ人はこれを買うかであったり、自分の経験としてこういうものがいいのではないかとトレースして提案したりという人が向いている(企画とかマーケティング業に)わけですね。

ちなみにこの観察ノックという企画は意図を明確にしていて、最初に書いています。これも書いた通りでして「読者」が僕の意図を知る必要性はほぼないです。企画をしたい人なら学ぶきっかけにはなりますが、そうでない「ビジネスヒントが欲しい」という読者には不要でしょう。実際に不要というか記事自体に意図を書く意義がないというだけです。意図が書かれていると「より記事の内容が分かる」ならありですが、なさそうです。

ちなみに、観察ノック企画の意図は、「観察結果や想像からアイデアを創発したり、または読者に使えそうなヒントや切り口を届ける」(観察ノック企画始めますより)ことですから、これを毎記事ごとに書いてあろうがなかろうが、「ヒントを届けたいのです」といっても、どう届けるかが工夫でありアイデアであり、記事の企画であり、文章であり、ライター側や企画側の仕事ですよね。つまり「ヒントを届けたい」といっても、「ヒントがあるか、伝わるか」は別ということです。もっといえば、工夫としては、「より身近なことを写真などで見せると身近なことをアイデアとして生成できること」が読者に分かりやすいのではないか、ということがあるわけです。他にも切り口というのを提示して、使いやすいものを提示しています。これらはあくまで「文章で意図として説明」でなく、「文章を読んだり、記事を理解すると見える」こととしてもっていくということですね。

最後になぜ、誘導ではないと言えるかというと、誘導しようとして出来れば苦労しないからです。行動経済学や心理学を使うのもありですし、大いに使っていいのですが、それをテクニックとしてやっている限り価値の提供とはずれたり、お客のためを思うとは本質的にズレている気がします。例えば「最初に高値を言っておいて正規の価格は安いのでそれを提示する」みたいなことです。心理的にはお客からは安くなった、あなただけ特別ですといわれて心が動くということです。これは詐欺的かどうかはかなり判断が難しいです。なぜならあなたが仮にこの発言をして騙す意図があれば詐欺ですが、騙す意図がないなら詐欺ではないでしょう。とはいえ、この時あなたの倫理が問われます。つまり「お客さん」を動かすために、「正式価格を高く提示」しているという行為がポイントとなります。お客さんのためというのは何かが問われます。冷静に言えば「あなたが売上をあげたい、つまり売りたいため」が先行しているからこそ、このような手法を使っているのではないかと言えそうです。仮に正規価格でお客さんのためを思うならそのまま提示すればいいわけですよね。

たまにこれらをパッケージやデザインといって見映えを変えていけばいいという人もいますが、「見た目」は気を遣うのは同意なのですが、その意図は何かという「デザイン=設計=企画」というところがポイントです。これをお客さんをちょろまかす(笑)ためなら、話にならないんですね。

もっといえば、仮に上のようなテクニックが確率が高くて成功するとしても、人間は馬鹿ではないので、防衛しますし、その情報が出回ります。明らかに悪いとか詐欺的であれば、警戒されるでしょう。一方でこれはいいこれは悪いとは言えないのは、人によって価値観、あと人は合理的に買わずに「感覚的」に判断する(たまたまコンビニがあったから買う的な)ことが普通なので、理屈やロジックで固めても誘導なんて出来ないんですね。共感や感情を操作みたいなことを考える人もいるかもしれませんが、そういう操作って直観で分かったり、そもそもちぐはぐだったり、「お客のため」を考えると「操作」的な「誘導」にはいかないかと僕は考えています。仮にこれが「誘導」に行き着く人は、商売とかで喜んでもらうとかでなく、単に支配したいだけかもしれませんね(笑)

誘導しているように思ったりする人は、ほぼほぼマーケティングや企画をやったことがないか、そのような行為を苦手としているかもしれません。ある種自分が良いとか、こうすると喜んでもらえるのではないかを提案して、それが否定というか通じないのが通例(笑)なので、その上でどうすればできるかというのは、これだけみえればタフさが必要です。もっと言えば、誘導だと分かっても魅力があれば買うとかもあります。とはいえこれも商売に入れられるかはかなり難しいです。どちらかといえば魅力で押し切るのは、商品やサービスが弱いからかもしれません。とはいえ、見せることや出ていくこともしなければ話は始まらないので、このあたりは常に考えていくしかないということなんですね。

切り口

  • 他人の仕事や他者のアウトプットから、意図が分かるかどうか?分かるならそれはどういう意図だろうか?
  • 意図や狙いを入れるのとそうでないとき、違いはなにが生まれるだろうか?
  • あなたの都合とお客の都合は異なる。その上でお客が動く、共感するとはどんなころだろうか?

筆者プロフィール

シゴトクリエイター 大橋 弘宜
シゴトクリエイター 大橋 弘宜
「シゴクリ」運営者。アイデアの力でお客様に貢献するゼロイチ大好きアイデアマン。ビジネスアイデア相談実績等は200超を超える。好きな言葉は三方良し。詳しい自己紹介仕事実績も合わせてご覧ください。お仕事メニューお問い合わせはお気軽にどうぞ。

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