フィットネス業界でのライザップとカーブスのビジネスモデルの違いを調べてみた

ライザップやカーブスはフィットネスとかやってなくても知っている人は多そうです。僕もそうです。ただライザップはイメージどおりだったのですが、カーブスは大量出店ではあるのはいいと、ただFCビジネス的なものが基本とあるので、この2つを比較すると面白いかなと思って比較してみましょう。

ライザップ

ライザップはRIZAPグループ株式会社で札幌証券取引所アンビシャスに上場しています。RIZAPはグループ化していて、単独と連結では違うかと思いますのでそこは留意が必要です。

2022年3月期 第2四半期決算説明会資料を見ていきましょう。確か決算発表が遅延したというのがありましたね。

売上実績は2019年2215億円、2020年2017億円、2021年1688億円とコロナ禍もあるのでしょうが、結構下がっていますね。コロナ前の2019年と比較すると、500億円くらい下げています。一方で営業利益はマイナスからプラスに転じたのが評価されるところなのかもしれません。

細かい話はおいておいて(笑)、今回はRIZAPのフィットネスつまり、ここではボディメイク事業となるのですが見ていきましょう。

P.37から累計会員数は17.1万人で2015年4.6万人から4倍以上伸びています。コロナ禍でも伸びているのは面白いですね。ただこれらはアクティブなものとか(そもそもRIZAP自体は短期型な印象です、とはいえ継続してキープするという会員のLTVを上げる戦略もあるのかなと)退会してもこのKPIが下がるかは不明です。多分累計なので下がらないと思います。

店舗数はP.40から168店舗です。GOLFとかENGLISHとかもありますし、海外もありますが、いわゆるRIZAPっぽいボディメイクが123店舗あるので、8割、つまり主力はボディメイクは変わらないかなと思います。統廃合をしていて、2019年197店(ボディメイクは130店舗)をピークに下がった感じですね。

サービス内容は、色々ありますが、ボディメイクとしては、ボディメイクプログラムが2ヶ月で月8回(トータルで16回)で、これが約30万円くらいです。ここがメインかと思います。他にシニア向けでも30万円で、新しいのはメディカルボディメイクというので、月2回で食事管理も週1として、健康増進狙いの人向けというのがありこれは月3万円でかなり単価が低くなっています。面白いですね。

会員の比率は正確には不明ですが、累計会員からの割合でなく、「全稼働ゲスト」の27%がメディカルボディメイク会員のようです。結構多いですよね。シニア会員も全稼働ゲストのうち、16%程度いるようです。これはメディカルを含んでいるとも思うので、参考程度です。とはいえ、やはりボディメイクが最もRIZAPらしい商品ですし、それがメインと言っていいでしょう。

あとはグループ企業が多くて全体像が掴みづらいというのもRIZAPグループの特徴と考えています。かなり売却したと思われますが、それでもアパレル系がまだまだ多いですよね。

業績見通しは通期で1700億円と変化はあまりなさそうですが、それよりもボディメイク事業はヘルスケア・美容セグメントとして、四半期で228億円となっています。RIZAPのボディメイク事業がどれになるかが非常に分かりづらいですが、ライフスタイルはアパレルですし、インベストメントは投資事業ということで、違うとなると、おそらくボディメイク事業は228億円に含まれるのかなというところです。四半期なので通期では1000億くらいになると思いたいですが、どうもQ2とあり累計な感じもします。このあたりは読み取りづらいですね。通期1700億からすると、800億は累計のように見えますね。

前期の資料を見ると、そもそも2019年から2021年は経営再建という位置づけで統合した会社をどんどん売却していたようです。そしてヘルスケアつまりRIZAPのボディメイク等は439億円で通期でしたので、上の228億円は第二四半期の累計と考えて良さそうです。

せっかくなので、店舗当たり売上高もざっくり出してみましょう。

ボディメイク店舗は2021年3月末で123店舗でした。そしてその売上は439億円でしたので、3.56億円/店舗あたりの売上となります。ちなみに、スーパーマーケットなどは1店舗で10億円くらい売り上げるので、売上だけみると、高い単価で確実に回している感じがしますよね。

会員数は16.3万人でしたが、アクティブな数は不明なので、仮に2021年と202年でその差分が年間会員数とします。つまり16.3万人-14.7万人=1.6万人程度が契約会員と想定出来ます。2ヶ月のプログラムを終えてどうなるかは一旦スルーして、単純に30万円を1回払ってプログラムを受けた人が1.6万人いるとすると、1.6万人×30万円=48億円となります。これですと、ヘルスケアに入っていたMRKを除いても253億円程度は欲しいので、全然足りないですね。

とはいえ、会員数が累計数字から大幅に違うのも考えづらいと仮定すると、おそらく単価が間違っているのかなというところです。つまり、1年あって2ヶ月通って終わりではない、継続か単価が高いプログラムがあると考えてみます。

以下実際の単価はもっと高いという要因です。公式の料金表も見てみましょう。

  • 入会金は55,000円税込みでかかる
  • プログラム後のボディマネジメントプログラムを取る人が多い。月3万円の模様。公式サイトではあまり見られず。RIZAP 新サービス「ボディマネジメントプログラム」を 2017年7月1日(土)より開始  業界初の「リバウンド保険」も導入し、リバウンド防止にコミット こちらは先のメディカルに似ていますが、メディカルは新規ゲスト向けなのに対して、こちらのボディマネジメントプログラムは既に利用して卒業とか12ヶ月使った人とか向けなんですよね。この成約者がかなりいるのではないかと考えられます。ただこれをどれくらい契約するかは不明ですね。ただ、このボディマネジメントプログラムは12ヶ月契約=年契約のようで、まあ年36万円となるので実質1プログラム分払って、アフターケアみたいな感じかなと思われます。
  • メインコースは16回コースのようなのですが、50分/1回か80分/1回では値段がかなり違います。最も安いのではマンツーマントレーニングコースで、327,000円です。ただこれが80分では547,800円となります。面白いのは、回数が24回=3ヶ月、32回=4ヶ月となって増やせるのですが、4ヶ月の場合は倍の654,000円とかでなく、616,000円と4万円くらい安くなるんですよね。回数あたりで安くするだけと言えますが、回数と時間を増やせば割安になるというのも一つかと思いました。つまり、推測に過ぎませんが、16回2ヶ月コースは意外に少なくて、24回コースとかの47万円などがわりと契約されているのではないかなという見立てです。
  • あと、サプリメントであったり、ローン支払いの金利などもプラスになりそうです。

以上から、単価感を修正して、1人3ヶ月の24回として47.5万円。その後、年契約のボディマネジメントプログラムを3割くらいは契約するので36万円とすると、15ヶ月と中途半端ですが、83.5万円くらいまでになります。あとサプリメントやローンの売上は分かりませんが追加で欲しいとか色々あるので、1,2割はプラスになるのではないかとすると、90万円から100万円くらいにまではなるのかなと。ただし、ボディマネジメントプログラムは全員が契約するわけではないというのも留意です。

その上で、1人100万とすると、1.6万人で、160億と先の3倍近くまでになります。これでもまだ253億円に到達していませんが、数字いじりはこれくらいで、多分1人あたり結構な金額を払うのだろうというところがポイントです。

またライザップはこれらをフィットネスなんて一切言ってないです。ボディメイクであり、自己実現、なりたい姿への投資という位置づけで、30日全額返金もつけているはずで、まあその姿勢や意気込みを評価する人がお客さんになるわけです。

細かい数字はおいておいて、1人あたりの単価がべらぼうに高い(と思う)というところが見えたらオッケーでしょう。その価値があるので暴利とかも感じません。

カーブス

次はカーブスです。

株式会社カーブスホールディングスのIRを見ていきましょう。

2021年8月期決算補足説明資料を見ます。

驚くかどうかはおいておいて、2021年通期で売上が246億円です。また営業利益も16億円と営業利益率は6.6%とこんな数字になるんだなという感覚です。

カーブスは、売上高内訳として、スポットとベースがあるとしていますが、ベースがほとんどです。そして、ベースのうちロイヤリティ等が22.6%であり、会員向け物販が58.9%となっています。

ここで「あれ、カーブスはフィットネスなどのプログラムを提供して会員型で稼いでいるのではないか」って思う方はグッドです。僕もそう思ったのですが、実際にカーブス本体が得ているのはロイヤリティ収入であって、あとは会員向け物販というわけなんです。

P.47が分かりやすいですが、チェーン売上高というのがあります。チェーンとはフランチャイズチェーンのことで、FC店舗が2021年で売上げた金額は585億円になります。内訳は会員向けが145億円とP.7とほぼ合致しているので、本体は物販売上と、チェーン店舗からのロイヤリティがメインが売上の主といって良さそうです。

入会金や会費などの売上はチェーン店舗自体の売上となりますが、これらが441億円あります。店舗数は、1958店舗あり、会員数は69.3万人規模です。ライザップの店舗数は200もなかったので、相当の規模ですね、10倍ですね。会員数も20万人もなかったので、3倍以上というのがカーブスです。

また会員向け物販って何かというと、プロテインなどのアイテムとなります。それらがほぼ物販の95%なのでプロテインを売って稼いでいるといっても怒られなさそうです。それらがしかも58%もあるのですから。

会員向け物販は、会員にカーブスが直販するようですが、販売手数料はFC店に払っている感じですね。ということはA店というチェーンがあれば、会費や入会金を得つつ、そういう物販で単価を上げることで売上を増やすか、あとは店舗数を増やすことが売上アップとなりそうですね。

ここでロイヤリティが55億くらいあるので、チェーン売上が441億円なので、単純に売上の1割ちょっとは払うのがロイヤリティかもしれません。実際は売上なのか、固定+変動ベースなのかなどもあるかと思いますが、一旦ここはスルーします。

そして、店舗あたりの売上も一つ見てみましょう。2000店舗ほどあって、売上が物販を入れたものでは585億円でしたから、585億÷2000店=0.29億円/店舗となり、1店舗あたり3000万くらいの売上となります。物販売上の販売手数料は不明です。

1店舗3000万となると意外に少なく、RIZAPと比べると3.5億円くらいあると考えると、10分の1です。

だからこそ、店舗数は10倍あり、かつ会員も3倍あるとすると、30倍あるので、店舗あたりの売上高が低くても規模で整えるという感じなのでしょう。

そして、ビジネスモデルとしては、あくまでFCチェーンの拡大であって、直営は20億で全体の1割に過ぎません。ほぼないといってもいいのでしょう。

あとは、会費ですが、本家サイトは各店舗へ誘導する形でしかなく、会費の明記があまりないんですよね。さすがにないわけでなく、FAQでやっとあるくらいです(笑)

お支払い額はコースによりますが、 店舗プランですと月に何回通っても5,700円(10%税込:6,270円)、もしくは6,700円(10%税込:7,370円)です。おうちプランですと月に何度ご利用いただいても4,700円(10%税込:5,170円)、もしくは5,700円(10%税込:6,270円)です。店舗プラン、おうちプラン、両方のプランをお得にご利用いただけるWプランですと8,000円(10%税込:8,800円)です。詳しいコースについては店舗までお問い合せください。

また、入会金は15,000円(10%税込:16,500円)です。入会金は店舗によってキャンペーンを実施している場合がありますので、 詳しくは店舗までお問い合わせください。

カーブスよくあるご質問 料金はどれくらい?より

となっています。コースがおうちか店かとありますが、店だと直接来店して30分やる、家だとリモートでつなぐくらいの違いでしょう。ただ機器がないので、多くはお店プランなのではないかと考えられます。

ざっくり7000円前後/月で、入会金は1.5万円ですから、セルフケアということでかなりお値打ち感があります。これらはしかもやり放題ということなので、RIZAPのようなサポートやプロのアドバイスがあるというものでなく、セルフでちょっと運動したい主婦層がメインターゲットと言えそうです。

とはいえ年間契約だと確か安くなるとか、色々あるようですがここでは割愛します。

要するに再度まとめると、カーブスは沢山の人にセルフで運動促進・健康増進という意味合いでちょっと運動してもらう。店舗数も多く1店舗あたりの客数も多くてもスタッフが少なくても回せる。まさにFC展開モデル込みみたいな感じなんですよね。

年3000万という売上ですと、月7000円として、年では8.4万円で入会金が1.5万円とすると、ほぼ10万円です。これが1人あたり年間の単価感と考えると、3000万÷10万円/人=300人となります。1人10万円払う人が300人いれば、3000万/年ってことですね。損益分岐点がどこかはおいておいて、これくらいの規模が集められるかというところの選定が出店戦略になるという考えも出来そうです。

ちなみに、解約率は平均月次解約率が2.3%となっていて、まあ300人いたら6,7人しか辞めないという感じなんですね。ただずっと継続していけるかはまた別の問題なので今後どうなるかというところでした。

ターゲットとサービスで全く価値が異なる

RIZAPはボディメイクという自己実現に近いものを、専門スタッフがきっちりマンツーマンで短期集中で教える+サポートも行うというものでした。だからこそ、単価が高くそれなりにお高いと思えるものでも、その姿を想像できコミットするというのは、ブレない価値観であり、浸透したと言っていいでしょう。そういうものがなかったし、求めていた人が一定数いたわけですから。

カーブスは、主婦層で40代以上など運動をしなきゃという層をしっかりと捉え、30分でいいので買い物ついでによるとか、でかけた後にちょっと運動するというスキマ時間をとらえた感じです。FCモデルで大量出店して制圧して、どちらかといえば半分は物販=プロテインで稼いでいるわけで、残りはFCロイヤリティというわけですね。よって専門スタッフやボディメイクではなく、健康維持や運動をして健康で居続けるのが目的で、セルフでやれるというところが売りとなっています。

僕が思ったのは、どちらがいいとか悪いとかはなくて、どっちもありなんだなというところです。短期集中でゴリゴリやりたい人は、カーブスに行くことはないですよね。逆に健康維持でちょっと運動出来ればいいやならRIZAPに行くのはズレていますよね。

そういう意味で顧客層が違うこと、またはその選択肢があることでそれぞれ成長してきたと言えます。逆にカーブスのようなターゲットにボディメイクサービスならミスマッチとならい、RIZAPのようなターゲットにセルフケアであれば物足りないとなって、価値創出が出来ないとなります。もちろん、企業としては別の層へアプローチすることで成長したり新規事業とすることもできますが、それらを劇的に変えるのは大変ですし、時代の流れや人々の考え方によって変わっていくのだなと言えそうです。

サービスを立ち上げるでも、何をするでもいいのですが、ターゲットというお客さまが誰で、何を価値として求めているか。その課題や出来てないことはなにか。それを望んでいるのか。同じ「ような」運動するプログラムでも全く違うことが分かります。または同じターゲットでもサービスが違えば全く異なります。

というわけで、ターゲット×サービスの価値という二軸で考えるだけでも、アイデアやビジネスは相当拡がるのではないかなということが分かるわけです。

IR資料をざっと見るだけでも分かることが多いので、ぜひ同業種を比較したりして解像度を高めてみると面白いかと思います。当然初見ですぐ分かることばかりではないので、慣れていくと面白いのかなと思います。例えば売上規模だけ押さえてもいいですし、その内訳が大分異なっているのだなと理解するだけでも、ビジネスの創出に使えるはずです。

筆者プロフィール

シゴトクリエイター 大橋 弘宜
シゴトクリエイター 大橋 弘宜
「シゴクリ」運営者。アイデアの力でお客様に貢献するゼロイチ大好きアイデアマン。ビジネスアイデア相談実績等は200超を超える。好きな言葉は三方良し。詳しい自己紹介仕事実績も合わせてご覧ください。お仕事メニューお問い合わせはお気軽にどうぞ。

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