知るカフェのビジネスモデルは広告モデル。創業者のMVPがダントツにイケてた。

以前調べた気がするのですが、再度気になったので調べてみました。

今回は知るカフェのビジネスモデルやどういうやり方で成長していったかについて調べてみます。

知るカフェとは

知るカフェ

知るカフェとは、コーヒーを無料で飲める大学生限定のカフェです。無料で出来る理由は、スポンサー企業の協力によって成り立っていると書かれています。

知るカフェの店舗数

とはいっても大学が限定されているのではないかと思った方はカンが鋭いですが、知るカフェの店舗数は公式サイトを調べると、19店舗でした。2017年11月28日時点です。

またcoming soonとして9店舗は全て海外の大学となっています。

既存19店舗の内、国内大学は16店舗で、3店舗はインド工科大学の3店舗となっています。

さらに国内16店舗とありますが、内訳としては、

  • 同志社大学
  • 京都大学
  • 早稲田大学
  • 名古屋大学
  • 東京大学
  • 神戸大学
  • 慶應義塾大学
  • 関西大学
  • 大阪大学
  • 立命館大学
  • 九州大学
  • 立命館大学 びわこ・くさつ店
  • インターナショナル 東京大学店(留学生専用)
  • 東京工業大学
  • 一橋大学
  • みなと銀行学園都市店

となっています。旧帝大や有名私立が中心というところです。みなと銀行のみ銀行とのコラボとなっていてこれは2017年の試みとして行われたようです。銀行の融資先企業など地元企業との連携が強いのかもしれませんね。みなと銀行とコラボレーションした新店舗がオープン決定!

2013年12月に同志社大店がオープンして、全国の大学に広がったというところですね。

知るカフェのはじまり

スポンサー企業の協力というのは分かるけれど、企業がお金をただ出すということはありえません。そこで、企業が一体なぜお金を出すのか。そのあたりを調べていくと知るカフェが回る仕組みが見えてきます。

『知るカフェ』が皆に好かれる理由とは?国内のオフライン採用市場から海外市場へに詳しく書かれていますが、知るカフェを運営するのは、株式会社エンリッションです。当時学生でもあった代表者の柿本氏によって作られました。知るカフェの狙いとしては、当時柿本さんが社会人と普段から交流して自然に出来たことを、他の大学生にも提供すると面白いのではないかというところが始まりのようです。

面白いのは、第一号店である同志社大学店は店が何もなかったときに、架空の商品を資料で作り企業に提案。合計25社の大手企業から受注して、工事発注とテナントを確保したそうです。まさにMVPだなと感じる一方、ここで25社から獲得出来るのはすごいなあと感じます。基本的に大手企業はすべてテレアポで企業の代表番号から採用責任者につなげてもらえるように踏ん張っていったそうです。いやーすごいですよね。

知るカフェのビジネスモデル

基本的にスポンサー企業の広告料で賄うモデルです。そのため学生は無料でカフェを利用出来ますが、最終的に広告が成立するのは「学生との接触」「採用活動への効果」が検証されるのかなと考えられます。

一人あたりどれくらいのコストをかけられるかによりますが、その時に必ず、採用活動としての広告代がかかります。例えば企業説明会の企画や合同企業説明会の出展、大学への出張説明、ナビサイトへの広告料などがあり、これらは結構な金額になります。

企業が新卒採用に投じる「1人50万円」の中身では、概ね一人50万円程度のようです。広告費と比較すると面白いと思うので、合同企業説明会など出展料が60万円などかかるというところから、年間100万というのは安価に感じられます。(単にワークショップ1回5人で開催人数からすると接触出来る人数は限られますが、それでも密なコミュニケーションが出来るとなると話が異なってきますよね)

就活期間である秋頃だけでなくても、全学年向けに交流会を打つことで先に学生とコンタクトを取っていくことが出来ます。インターンシップへ誘ったり色々と企業の採用戦略が広がりそうです。

知るカフェの売上シュミレーション

売上額

知るカフェのカフェ店舗運営ですが、30企業×100万とすれば、年間3000万が売上となります。他にも店舗内のPRなどから売上が上がっているかもしれませんが、そこは省きます。

経費

コーヒー等1杯無料(原価50円程度)、毎日250人の学生から、1日最低でも12,500円の飲食費の負担となります。他におまけのお菓子などは適宜でしょうが、これで月間40万程度。

営業時間は、平日のみで10時間程度なので、3-4人常駐しているとすると(全体は15人程度のシフトで回すはず)、アルバイト時給1000円とすると1時間4,000円程度、交通費等は面倒なので省略して、10時間で4万円となります。月間20日とすると80万円。店長はプラスとかはありそうですが省略。実際は採用情報にあるように、店長クラスやマネジャーなどはおそらく1,500円時給まであがるようです。

他には店舗の賃料など変わりはありそうですが、京都大学前店の1Fでなく、3Fの賃料が25万で、保証金が6ヶ月なので、保証金を無視して、賃料のみであれば、おそらく30万程度かなと推測出来ます。ただ、知るカフェは1,2Fを使っているようなので、60万程度。

水道光熱費は、水道や電気代などが店舗面積を50坪とすると、坪5,000円であれば25万。

ざっくり、無料コーヒー代40万+人件費80万+賃料60万+水道光熱費25万で205万です。インターネット通信費とかもありそうですが、省いています。

粗利

売上3,000万から経費2,400万となり、粗利は600万です。

経費はもう少し高いかもしれません。当然エンリッションは会社ですので、この粗利から会社を経営していくことになります。単純に1店舗あたりが上の金額なら、約20店舗あれば、売上6億、経費4億8千万、粗利は1億2千万程度となります。

大学選定が優れている

あくまでざっくりですが、概ね見えてくるのは、国内大学が増えることはおそらくあまりないでしょう。なぜなら大学ブランドや国公立や有名私立大などは常に受験希望者数が一定数あるから少子化となってもあまり関係がありません。正確には知るカフェの来客学生が減ることにはならないと言えます。だからこそインド工科大学や海外大学というところに目を向けていると考えられます。

そういう意味で大学の選定が非常に優れていると感じました。

スポンサー企業が減るリスクなどはないのか

これを見ると広告だよりと目に映るのですが、実際は大手企業を中心に採用ニーズがしっかりとあるところであり、むしろ金額的には安価でかつ企業的にも広告をやっているというよりも「学生への就業意識を高める」というところで、かちっと合っていくのかなと思います。もちろん法人のケアやサポートを怠らなければ年間契約なので安定はしそうです。

就業意識を高めるために学生が運営し、学生が無料でお茶をしても企業パンフを見てくれたり交流会に出てくれるので、一石二鳥というところでしょう。学生側も無料で頂いているという意識はゼロでなく、単に無料で飲めるのは「目の前のスポンサー企業があるから」といえば、心理的に恩恵を感じるわけですね。

そういうところから、店舗への企業広告のみでは売上は上がりませんから、法人向けサービスであったり、店舗数を増やすというところになっていくのかなと思います。

企業側のメリットなど

企業の支払う金額

1店舗年間120万円で、どの店舗でも同一のようです。また企業の規模は関係なく、ベンチャー企業から大手企業どこでも一緒のようです。

「有名大至近、学生限定」の無料カフェが急増の記事では、1社90万円となっており数字が異なっています。またこちらの記事では、1店舗あたり30-40企業というのが目安とあります。

ここから考えられるのは、1店舗100万円前後ということと考え、その金額で採用活動見込みであるターゲットにアプローチ出来るので大手企業にとっては安いと考えられそうです。

企業のメリット

知るカフェのサービスとしては3つあるようです。

  • スポンサードした知るカフェ店舗を企業が自由に使える
  • 知るカフェ店舗への広告として、パンフレットやロゴを店舗内に掲載、設置出来る
  • 知るカフェ店舗内での知るカフェ交流会を開催出来る

の3つです。

知るカフェ交流会というのは、企業の就職説明会に似ていますが似て非なるものでしょう。ワークショップ形式で定員5名という少人数。そして知るカフェで行われることから、企業の会議室やオフィスビルではない雰囲気を演出出来ます。イベント情報を見ると、大手企業の交流会で埋め尽くされていますね。

また公式サイトでは法人向けサービス一覧に、商品PR等のサービスも一覧化されていますね。

スポンサー数

公式サイトにスポンサー一覧が出ていました。横に3、縦に41ほどあるので、合計123企業がスポンサーであることが分かります。

店舗数で割ると1店舗あたり6社となり少ないので、複数店舗にスポンサードしているのだと考えられます。例えば全エリアでやりたいとか、関東関西でやりたいとかでしょうね。

ベンチャーや中小企業が使えるか?

確かにスポンサー料は規模によらず同一というのは分かるのですが、ベンチャーや中小企業が年間100万を出しかつそこに人をへばりつかせて採用するというのはなかなかないのかなと感じました。もちろんそういう企業があるかもしれませんが。

仮にスポンサードしても、大手企業などと闘うことになるので、うまくアピール出来ずに終わるのかなと。そういう意味でみなと銀行と地元企業のアピールは新しい取り組みなのかなと感じました。

ベンチャー企業も色々ですが、Wantedlyのような採用サービス(特徴はミッションを共有し、会社訪問をライトにするところ)であれば、ライトプランで年60万円です。会社の規模よりも、会社がどういう人物を採用するかで変わるので比較はできませんが、知るカフェというオフライン採用はやはり大手企業向けで体力や資本があるところでないとやらないだろうなと感じました。それはそれで大手向けのサービスとしてワークしているのでグッドでしょう。

学生側のメリット

カフェ代が無料(1杯)なので、どこかでお茶したり、大学内の図書館以外で勉強する良い選択肢となりそうです。

就活情報として企業の情報をどう受け取るかですが、気が向けばそこで知るカフェ交流会に参加しやすいので、手軽に無料で使えるカフェとして使う感じだと思われます。

やはり学生にとってはお金がかからないのが最も大きなリターンだと言えそうです。そしてその場に慣れてきて就活情報も得られやすいなら悪いことはないわけですね。

居心地が悪いとか、食べ物がまずいとかそういうカフェとしてまずい点がなければ普通に通えそうです。

知るカフェ側のメリット

知るカフェ利用者数

1日2,500人というところで、10店舗経営時点でそうなので、平均1店舗250人前後は利用者しているということで、普段使いの延長というところなのでしょう。

立地戦略としては大学近隣作戦

立地をターゲット大学があるそばに置くことで成立を狙います。店舗名は「大学名+”前”」という名称です。大学内にあるのでなく、大学そばにある立地を確保してそこで学生アルバイトも含め、無料カフェという形で来てもらうわけですね(知るカフェの運営は学生なので)。

知るカフェ側のメリット

知るカフェとしては、学生が運営するという意味で模擬店ではないですが、就業意識やらを高めるというのもありそうです。学生が一から起業するよりも、模擬だろうなんだろうが、バイト的に自分たちで店を運営するのは楽しそうですし、意識が高い学生ならチャレンジしそうです。

冒頭にも書いたオフライン採用であったり、創業者の柿本さんが感じた就活を具現化することで就活を変えていくというミッションに合致しています。

おわりに

知るカフェのビジネスモデルは広告モデルとなりますが、シミュレーションをするとそこまで稼げるとは思えませんでした。テナントの改装費なども結構するわけで、それらや店舗保証金なども入れると数百万は確実に最初に掛かります。1年目はほとんど収益は上がらないけれど、2年目から一定額上乗せというところでしょうか。

広告企業に左右されつつも、逆に企業が安定的に広告を出してくれるなら、学生や店舗で働く学生に対して知るカフェ側、エンリッション側はとくにリスクを投じずにミッションを実現できる点が面白いですね。逆にいえば、大手企業からスポンサードされる商品としての知るカフェが魅力的でありそれがウリだからこそやれると判断したからこそ出来た事業といえます。これらは当初のMVPで25社から広告費を得た上でやっていたので営業力のすごさが分かります。僕はそんなことはまずできません(笑)

そういう点を見れば「知るカフェは学生の就業意識や就活のやり方を変える良いモデル」ともいえ、社会的な意味合いも生まれます。

知るカフェモデルはこのまま定着して今後海外でうまく伸びたり、あとはみなと銀行に見られる地元企業密着型などがうまくワークすると楽しそうです。ビジネスとしてはそれらが広がらないと成長はないので、既存店舗での広告PR商品を増やしたりそのノウハウから違う事業をやるなどが考えられます。

調べてみて思ったのは、社会的な事業だなという感想です。同時に大手企業に売り込んでスポンサード出来るスキルや胆力がない限り、またはそれが見込めない限り広告として成立しないのでそこはすごいなあと感じました。失敗するモデルとしては、単に見込み企業がないのに店舗であったり商品を作ってしまうところでしょうか。そういう意味で最強のMVPを作ってやっているなあと関心してしまいました。

Webサービスなどでも広告をはって稼ぐなどはmanaveeの事例でも見たわけですが、言うは易く行うは難しです。一人くらい食べるならわりと出来るとは思いつつ、複数の人や組織がそれで何かをやるとは結構な難しさがあります。知るカフェ自体もそういうアイデアを思いついた人は多分今まで相当数いたのではないかと思います。とくに就活をしたりそこで採用の非効率性を感じた学生など、似たようなことをやっても事業化するところまではいけないのが普通です。

そういう意味でも、学生向けまたは企業の採用ツールとして今後知るカフェがどうなっていくかも面白そうだなと思いました。

追記

2018年12月時点では、17店舗。協賛企業は150社と自治体。年間約300万円の協賛費ということのようです。企業の魅力争い激化 大学前の就活カフェでPR合戦、150社協賛を参考。

筆者プロフィール

シゴトクリエイター 大橋 弘宜
シゴトクリエイター 大橋 弘宜
「シゴクリ」運営者。アイデアの力でお客様に貢献するゼロイチ大好きアイデアマン。ビジネスアイデア相談実績等は200超を超える。好きな言葉は三方良し。詳しい自己紹介仕事実績も合わせてご覧ください。お仕事メニューお問い合わせはお気軽にどうぞ。

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