タダヤサイドットコムは生産者が低コストで宣伝できるサービス
今回はそういえばあったなというところで、タダヤサイドットコムというサービスです。
ただこのサービスは、名前がタダ=無料とあるけれど、それは抽選の限られたキャンペーンであり、実際それ以外でタダというわけではありません。
名前から入ると思わぬ感じなので注意が必要ですね。今回はタダヤサイドットコムについて調べてみます。
目次
タダヤサイドットコムとは
公式サイトにもありますが、プレゼント商品で送料負担でもらった野菜などで味わい、その後お客さんになって販売されているものを買うECサイトとなります。
公式サイトは、
タダヤサイドットコムは、プレゼント商品を食べて頂き「美味しさ」を確認した後にお買い求め頂けるサイトです。
(タダヤサイドットコムより引用)
となっております。
「名称」のキャッチさなどから想像される「何でもタダで野菜がもらえる」のではありません。これは良くも悪くもキャッチの強さなので、まあそういうサービスという理解は別にいいのかなと思います。
現状もサービスは続行されており、柿やほうれん草やネギなどがもらえます。ただプレゼント商品は数十名の限定なので、まず当選する確率は低いでしょう。これらについては後で検証していきます。
ビジネスモデル
設立は2011年で、現在6年経過
タダヤサイドットコム自体は設立が2011年(野菜が無料でもらえるサイト「タダヤサイドットコム」が誕生。)でマスコミに取り上げられた影響もあり会員数は2015年時点で16万人となっているそうです。最新の朝日新聞の記事(Facebookページの記事)によれば、会員は2017年10月で20万人だそうです。記事にあるように、目が出てしまったジャガイモ1箱10キロを800円で売り、10箱が1時間で売り切ったとあります。実際に商品価値が低くなり目が出てしまったジャガイモは多分農協等では卸せないということでしょう。
ちなみに送料は負担なので、購入者側からすれば、みかん箱のようなダンボールであればヤマト運輸で80サイズ、100サイズ程度とし、関東から中部なら25kg以下ということなので、1,200円程度はかかりそうです。送料込みで考えると2,000円程度となります。例えば、楽天等で買う場合は販売者側のモール出品料等がかかるはずですが、送料込みで3,000円ちょっとでじゃがいも10kgが買う事ができます。[2017年秋収穫 男爵いも 10kg] 北海道真狩産じゃがいも「男爵いも」10kg!!ジャガイモなどですが、これはとくに訳あり商品ではないため比較するのも微妙ですが。
なお、10kgは概ね1kgで5-6個として中くらいのサイズとすると、50個から60個で1箱となります。これだけの数は家庭用では辛いため、イベントやお店など何か使いたい人向けとなりますよね。普通の商品状態で通販などで買えば、ピンきりですが上の例からすると、10kg3,000円程度はすると考えると、約27%の価格で買えることになります。芽の処理が手間がかかるけれどというところでしょう。
一言でいえば、訳あり商品を農家が直接売れるということです。ただサイトを見るとプレゼント商品としての登録はないので、直接メルマガ等で会員に直接送られているかなと思います。
収益の仕組み
ドリームゲートの記事規格外野菜を無料プレゼントするサービス!? 農家と消費者を直接結び付ける「タダヤサイ.com」は、2015年の記事ですが詳しく書かれています。ビジネスモデルとしては、非常にシンプルです。
1.会員向けの広告
2.タダヤサイドットコム上での販売手数料
となりそうです。
プレゼント商品などは、生産者側で見込み客を集める宣伝手段となるわけですね。こちらが出品者向けの案内となっています。タダヤサイドットコム自体は太っ腹で、見込み客に対して直接当然個人情報を得たものをそのまま使っていいとあります。直接取り引き出来るのでお客さんとしてアプローチできるんですね。もちろん当選者のみのリストが集まることになります。これ自体ではビジネスにならないので、こういうメリットが販売者にある、生産者にあるということで2のタダヤサイドットコム上で売る仕組みを作ろう。タダヤサイドットコム内にストアを持つということになるでしょう。
1の広告はサイト上ではなさそうなので、メルマガ広告かもしれません。例えばメルマガ上で主婦層が見込み客が多いのでそういう層にアピールしたい事業者からスポンサーとして広告するということですね。20万人のメルマガであれば、また主婦層というところで広告としては有用かもしれません。
2は2015年時点では販売毎に手数料30%のようです。今でもそうだと推定します。 生産者・出品者の方では、出品費用、初期設定、販売ページ作成費用、メルマガ告知費用が無料です。そして、販売ページで売れた場合、30%の手数料が入ります。手数料は高めですが、出品から初期設定、販売ページ、メルマガも含め無料というわけで高めでも問題ないのかなと思います。ちなみに、販売ページがない場合は3万円で作る有料作成もありますがこれも良心的な価格と言えそうです。
完全に出来高のみで支払うので、商品として売る販路がない生産者にとってはプレゼントとして送付するなどの手間を考えると非常にメリットがあると言えそうです。なお販売者側はタダヤサイドットコムは安いという位置づけを守るため、他ECサイトも併用している場合はそちらより安くということもあります。
つまり、消費者側から考えるよりも、販売者側から考えると分かりやすいです。プレゼント商品は集客のためのフックということで、基本的に売れた場合の手数料収入、あとはメルマガ広告あたりが収益源となるかなと思います。
会員の転換率
実際に無料プレゼントからどれくらいが顧客になるかというのは、上の記事では「4-8%」ということです。1プレゼント企画で、3000人から1万人の応募があり(公式サイトにあり)、そこで数十名(15から50名)の当選者となっています。
仮に3000人で15名なら、当選確率は0.5%となり普通の公募などよりはいいかもしれませんが、かなり粘らないと当たらないと言えそうです。一方で15名当たった場合、4%とすると、0.6人となり足りないですね。もう少し当選者数を増やして、30名で1名の優良顧客という感じになります。
これはプレゼント商品を相当打たないと顧客化しない感じはありますが、例えばじゃがいもが無料にして宣伝して顧客に転じてそれで商売となるかというところですよね。顧客がリピートするなどもあり、月10名程度の新規顧客を得るなら上の10倍なので、10回ほどプレゼント企画を行う必要があります。とはいえ1農家さんで抱えられる顧客数とは数百名もあれば十分なのかと思うので一定の顧客が得られたら見合うということかもしれません。このあたりは推測の域に過ぎません。
プレゼント商品の頻度
プレゼント商品は例えば2017年でいえば、6月から10月までほぼ週1であり、つまり月4回、年に48週とすると、約50回程度年に行われていることになります。つまり農家が違えど毎週プレゼント商品があることになります。
上では当選確率が0.5%としましたが、1年程度粘れば当たるかもしれません。ただ根気が必要であり、そこまでするなら買うというのもありそうですし、ここが難しそうです。
また、2017年11月6日までの玉ねぎ商品では、URLより845ということで、845回プレゼント商品企画があったという推測が出来ます。つまり、7年間で845回、年間あたり平均120回プレゼント商品企画が行われているという計算になります。
販売農家の数
会員数は20万人というところは分かりますが、販売農家さんの数はいくつでしょうか。これも数値が出てこなかったので、2015年のドリームゲートの取材では、登録農家は57人となっています。
タダヤサイドットコム上にある販売農家を見ていくと、都道府県で農園や農家名があります。これらをカウントしていくとします。都道府県をクリックするとアイテム登録だけがあるページは省きます。そうすると農家数は20となり大分少ない印象となります。生産者一覧ページはメンテナンスされているかは不明ですが、こちらは17農家となります。
推測に過ぎませんがサイト登録をしてページで販売するというところまでの農家はあまり数はないが、イベント即売などでアピールしたりそういう見えない農家さんが多いのかもしれません。例えばメルマガのみで出て来る方など。
ただそうすると、肝心の手数料収入が得られないため、ビジネスとしては厳しい印象があります。
ビジネスとしての課題
ここまで考えると、
1.利用者は20万人いてタダヤサイを欲する人も多いが、生産者側の登録数が非常に少ない気がする。
2.数十農家で週1のプレゼント商品を行っているとすると、仮に50農家あるとすると、1年で120回、1農家あたり平均2.4回程度はアピールが出来る。その場合、例えばいつも出してないけど訳あり商品が出てしまったら手軽に売れるし、顧客に1割は行かないがなってくれるため便利。
3.消費者も無料公募サイト感覚で使えばラッキーという感じ。そういうユーザーは多そう。また、販売者側も2のように訳あり品をうまくアピール出来るのでオッケー。ただ、最後に直接取引をして優良顧客になっていく率が少ないのではないかというのが難しそう。
となってくると、タダヤサイドットコムの運用として、広告収益をメルマガかサイト上で得ることがないと厳しそうというところです。
無料品などサンプル品を送ることで顧客を得るモデルは実はよくある形で、一方でそこに依存する形だとビジネスが辛くなるという気もします。
口コミ効果は高く、おそらく当選した人はプレゼントが当たったからということでおすそ分けをするため広がります。ただそこで生産者が増えるわけではないのが2015年にもありましたが課題なのだろうなと思います。
例えば、1プレゼント企画で平均20名として、120回年間に行われると、2400名が当選します。これは結構な数ですね。それを農家さんの数想定50で割れば、1農家さんあたり年間ですが48名の当選者を獲得できます。ただこれは商売としては少ないかなというところです。
優良顧客転換率を高めの8%としても、1割計算として、約5名です。年間5名では厳しいというところですよね。おそらく農家さんが増えてないとするならば、直販で売っていくモデルを構築できないか、単に顧客獲得コストが高い(広告宣伝費として訳あり商品をリリースしても、もちろんコストはかかっています。ただ廃棄するくらいならというところです。それを活用した視点はいいのですが、結果的にそこから顧客となる率と数が少ない)ため、見合わないと考えるのかもしれません。
思えば、2011年当時よりも、現在は無料ECサービスから色々なものが低コストで運用でき、ブログやSNSも手軽に使えるようになりました。そういう面で、おそらく販売者側としてはタダヤサイドットコムを使うメリットというか筋としては、試供品サイトやサンプルサイトの集客告知力を期待し一気にさばけるという点なのかなと思いました。
ただ朝日新聞の記事にあったようなじゃがいも直販サイトが見つけられなかったのでそういうページが実はあって活発に販売サイトで手数料モデルで成り立っているという可能性もありますが、登録農家が少ないためバランスが悪いというのは拭えません。
おわりに
タダヤサイドットコムは名前のインパクトがあり、消費者受けという点は大きいと感じました。ただ送料もかかるのと、狙った野菜がまず当選確率からするともらえない人のほうが多いのも事実です。送料はいるがタダで野菜を入れられるのも難しく使いづらいのかなと感じました。
もちろんそれでなければ、販売されているものを試せばいいわけです。その場合、出張販売などをイベントとして行ったりされているようで、そこで契約農家から直接送ってもらい売るという流れになります。
ビジネスモデルとしては、無料やサンプル品としてまず試してもらいそこから有料商品として本来あるべき姿を試すというモデルでした。これは面白いのですが、サンプル品とくに無料品はそこから優良顧客となりづらく、またリピートしたりそこから広がる展開が見えづらいため、手堅く広がるというのがありません。
仮に改善するならば、例えばそういった優良顧客見込みが高い人達を集めてイベントやコミュニティとしていく流れです。これは食べる通信のようなモデルで、無料ということはなく生産者のストーリーと見える関係をつくりそこからコミュニティを通して売る、ファンを作るというモデルです。この食べる通信もそのうちしっかりと調べてみたいですね。
今回結論としては、生産者にとってはメリットが大きいので使う意味はあるようにみえる。けれどそこまで登録農家が伸びてないように見えるのはなぜか、そこが最も疑問として残りました。もしどこかで販売農家数または月間流通高などが分かれば追記していきたいと思います。
今回も時間を書けすぎてしまいましたねー(笑)
筆者プロフィール
- 「シゴクリ」運営者。アイデアの力でお客様に貢献するゼロイチ大好きアイデアマン。ビジネスアイデア相談実績等は400超。好きな言葉は三方良し。詳しい自己紹介、仕事実績も合わせてご覧ください。お仕事メニューやお問い合わせはお気軽にどうぞ。
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