新日鉄は雇用創出目的で新規事業を展開したがほぼ失敗に

新しい場所や新しい店にいくと面白い発見があります。ただ新しくなくても、慣れた場所でも何かないか?と探すと意外にあったりします。その違和感生成をある程度出来ればネタに困らないと思います。

今回はスペースワールドという遊園地ですね、それが閉園予定ということでそもそもスペースワールドってどこが運営していたのかを調べていき、それらは新日鉄の新規事業の一つだった・・・らしいというところを色々調べてみました。

この記事自体はだいぶ前に調べたもので半年くらい前です。スペースワールドの閉園ネタからスペースワールド自体の興味は結構あるので、また別途調べたいと思います。

スペースワールドとは

スペースワールドとは、福岡県の北九州市にある遊園地です。とはいえ僕は行ったことはありません(笑)

なんでスペースワールドのことを調べたかというと、たまたまた魚の上を滑るスケートリンクで話題になったからだけなのですが、またほぼ同時期くらいに閉園するというニュースも見かけました。そこから気になって調べてみたというところです。

閉園のお知らせがしっかりサイトにあります。

さて、当園は1990年の開業以来、多くのお客様に楽しさを提供して参りましたが、
諸般の事情により2017年12月末日をもちまして閉園することと致しました。

(スペースワールドより引用)

27年の運用年となります。長いですよね。

さて、今年の12月に終わるということで、おそらく地元や楽しかった思い出がある方は行かれるのかなと思います。とはいえ、今回はそれが主題ではありません。

その前に、スペースワールドの運営会社は?

以前見た時は、確かスペースワールド株式会社が運営だったと思うので調べてみると、現在会社概要では「株式会社ジャパンパーク&リゾート」と書かれています。株式会社ジャパンパーク&リゾートの情報というところでは、今年1/31に名称が変更になったとあります。こちらの法人番号「3290801009241」の検索結果では、変更前が株式会社スペースワールドとなっています。つまり、今年になって名称が変わったんですね。

新日鉄の新規事業として事業

スペースワールド17年末閉園 「経営難が理由でない」の記事では、元々1990年開園当初は新日鉄の多角化の象徴としての事業だったようです。確かに重工業の鉄だけではなく他の新規事業をというのが狙いだったのかもしれません。

日経の記事は経営難でなく、単なる土地保有者と更新が不調になったということのようです。2005年に経営破綻しつつも、再び巻き返したのはすごいですね。

最後の一文が最も気になっていて、会社は存続し雇用も維持とります。そのノウハウを活かして「新事業」とあります。これはなかなか面白そうだなというのが今回調べたポイントになります。

つまり、スペースワールドは経営難でなく、単なる更新の失敗であり、とはいえ従業員の雇用を解雇するわけでなく新たな事業を構築するというわけです。やるなあと思うわけですね。

スペースワールド自体もあまり知りませんし、そもそもこちらとしては閉園を皮切りに知って調べるという形です。新日鉄がそんな切り口で事業をやっていたことも全く知りませんでした。

またこちらのあの一大テーマパークがまさかの閉園…謎多き運営会社、閉園理由めぐる憶測では、当時目玉事業としてスペースワールドがあったということも書かれています。面白いですね。

閉園の細かい理由は今回は省きます。またそれらの詳細も正直良くわかりません。あくまで、どう新規事業を作ったか、それはスペースワールドがどう作られたか、または新日鉄が新規事業を多角化とあるので他にもあるのかそのあたりを突っ込んで調べていきます。

なぜ新日鉄は新規事業を始めたか

当時の時代背景や始めた理由が書かれています。二次ソースではあり恐縮ですが、引用させてもらいます。

新日鉄はスペースワールド開業の1990年当時、世界一の製鉄メーカーであった。元々、官営八幡製鉄所であったこともあり、堅い社風であった。

それが鉄から最も遠いテーマパークの経営に高くしたのは、本業の鉄の生産減、韓国の追い上げなどが原因であった。

新日鉄は1987年にスペースワールド設立を決め、1988年7月に株式会社スペースワールドが設立された。1987年当時、新日鉄の設立後、売上高のピークは1980年の3兆1,260億円であり、円高不況に見舞われた1986年と翌年は2兆1,000億円台まで落ち込んでいた。成長分野に活路を見出すしかなかった。

当時の副社長、古賀憲介氏は、従来の鉄だけでは成長のチャンスはなく、市場が急速に成長しているエレクトロニクス、情報通信、都市開発、生活開発などの分野に進出する必要性を述べている(岩淵1990,68)。

(中島 恵「新日鉄の非関連多角化におけるテーマパーク事業参入」(大阪観光大学紀要第12号)、P.63より引用

見やすいように改行、太字は筆者が加えた。また引用文最後の文献は、岩淵明男(1990)「発進!スペースワールド」日本工業新聞社による。)

一次ソースは岩淵氏の書籍になるのですがさすがにそこまでは見ていません。新規事業を目論んだのはメインの製鉄が売上が下がってきてやばくなってきたのと、韓国の追い上げなどもあったということになります。

そしてその中で新規事業として、エレクトロニクスや情報通信、都市生活、生活開発などに出るというところになったといえます。

新規事業を始める理由は、結局本業の収益ダウンからということですが、それこそが色々な事業に手を出す、それこそテーマパークビジネスであるスペースワールドというものにも手を出したということになりそうです。

多くの新規事業は普通に失敗する

新日鉄が面白いなと思うのは一人も解雇しなかったという話です。もちろん約65,000人を再整理して75%削減して約15,000人にするわけですが、それは鉄の生産などの事業部に対してであると。そうなると、5万人の雇用をどうにかしなければならない。そこですごいのが、

ただ我々として誇れるのは、1人もレイオフしなかったことです。6万5人を1万5千人にカットですから、並大抵のことではないんですけれども。

例えば、社内における仕事を社外に出して新しい会社をつくったというのが一つのやり方です。

それからもう一つは、新規事業を沢山つくりました。制服の製造、ウナギの養殖、大豆食品の生産、使い捨てカイロの鉄粉の製造など、聞くも涙のような事業を始めました。そういった形で、1人もレイオフしないようにしたんです。

そのために必要な資金、事業費も負担しました。土地や株を売ってまで、費用を捻り出したわけです。総額1兆円くらい掛かりました。大きな事業転換をするときには、平等に扱うことを示さないと、当然不満が残りますよね。

(新日本製鉄 三村明夫会長 −「政界と財界は真摯に対話せよ」(後編)より引用、太字は筆者)

いやーまじでそれをやるとはすごいですよね。ウナギの養殖もですが、大豆食品生産など本当に新規事業ですね。経験値や見込みがあればいいんでしょうが、ここが気になりました。それらの事業がどうなったかと。

当然気になるのは給料です。高い給料をもらっていた人が異動となり、大豆食品生産会社に勤める(この会社も新規で作る)わけですから、どうなるか。でも、いきなり新規事業で収益は上げられないから、新会社から少し出して差額の高い給料部分は新日鉄本体で負担するという形だったとあります。これもすごいですよね。

結果的に、大部分は失敗ということですが、ここでスペースワールドについても書かれています。

いろいろな事業に乗り出しましたが、大部分は失敗です。

記憶に新しいのは北九州のスペースワールドという娯楽施設です。半導体なども失敗でした。

成功例でいえば、私どもの中にあったシステム部門を外に出し、日立さんなどと合弁で会社をつくって、さらに統合して新日鉄ソリューションズという会社をつくりました。これは大成功でしたけれども、雇用創出が狙いで始めた新規事業は、間違いなく失敗します。

(同上より引用)

また、こちらの記事も同様の失敗が書かれています。

一番規模の大きかった新規事業が半導体です。パソコン事業にも乗り出しました。キャビアの養殖、使い捨てカイロの開発・販売、下着の通販。新日鉄が、直接下着の通販を手掛けたとは信じられないかもしれませんが、本当です。

 とにかく実に様々なことをやりました。そのほとんどが失敗に終わりました。ほとんど唯一芽が出たのが、現在の新日鉄住金ソリューションズ。買収に失敗した後、米オラクルとの間でデータベース・マネジメント・システムの日本での事実上の独占販売契約を結び、パッケージを売ったのです。これが当たり、その後、システムエンジニアリング会社として成長する一つのベースとなりました。

 そのほかの異業種への進出は、ほとんど全て失敗。売却・清算等に追い込まれます。

半導体やPC…多角化に失敗、鉄ビジネスに回帰 第45回 佐久間総一郎 新日鐵住金 副社長(2)より引用)

スペースワールドも失敗ということで、半導体なども失敗だったようです。餅は餅屋とはよく言うものですが、とはいえ、新日鉄ソリューションズは成功したと。ポイントは失敗云々でなく、「雇用創出」するために、新規事業ってやっぱダメだという話なんですね。

今どうなっているのか、例えばうなぎの養殖であれば、新日鉄住金系が沖合養殖 海洋プラント技術を転用として、養殖するためのいけすを設計しそこで銀ジャケを養殖するというところのニュースがでてきました。うなぎの養殖とは直結しませんが、関連ではありそうですね。そういった投下した経験値は生きているのかもしれません。

おわりに

事業規模が大きく兆レベルとなる売上とか規模感はよく分かりません。ただ、新日鉄の新規事業って昔そんなことをやっていたのかということでかなり面白かったです。

半導体事業の投資も含めほぼ失敗して、結局従業員がどうなったかは不明ですが、スペースワールドはあと1ヶ月ちょっとで閉園となり、昔の新規事業投資の幕が閉じられるのかもしれませんね。

スペースワールドについては、そういう全体的に見れば失敗だという経営的な面はあれど、企画としては面白いものが多かったのでまた調べていこうと思います

筆者プロフィール

シゴトクリエイター 大橋 弘宜
シゴトクリエイター 大橋 弘宜
「シゴクリ」運営者。アイデアの力でお客様に貢献するゼロイチ大好きアイデアマン。ビジネスアイデア相談実績等は200超を超える。好きな言葉は三方良し。詳しい自己紹介仕事実績も合わせてご覧ください。お仕事メニューお問い合わせはお気軽にどうぞ。