じみイノ本がすこぶる面白かった話

じみイノ本って何かというと、「地道に取り組むイノベーション」って本です(笑)その略ですね。

三部構成となっていて、ものすごくざっくりいえば、1部が渡辺さんというまあイノベーション部署(というと語弊がありますが、まあ分かりやすく)の実践を書いていて、二部では人類学者の比嘉さんが人類学者的な見方、つまりビジネスセクターと学術サイドみたいな感じでオッケーです、最後は北川さんが制度経済学という僕は聞き慣れないですがそれでさらに客観視って構成です。

僕はかなり面白かったです。結論もくそもないのですが(笑)本当に文字通り地道に、そのやり方を反芻しつつそれを覆すというある種の手法改善を常にしていき、どこにたどり着けるかみたいな「旅」がある種イノベーションと結果的に言われるのだろうと感じました。

内容としても面白いのですが、どちらかといえば研究本であって、ヒリヒリした感じって普段何か新しいことをやるぞとか、企画するぞとか、何か0→1をやっている人にしかあまり分からないのではないかって感じがしました。実戦経験がないと、入り込みづらいかもです。あとやや論文調、自己参与観察的なものですが、入りづらい人はちょっとつらいかもですね。

アイデアの話

(略)つまり(新たな)問いやアイデアはある瞬間に突如として訪れるものではなく、柔軟なリサーチを積み上げていくことで断続的に生成されていくプロセスと考えるほうが適切ではないか。つまりリフレーミングとはリサーチにおける個別具体的な諸実践をとおして、協働相手および対象に応じた柔軟な態度で常に取り組むことでしか、到達できないのではないか。

「地道に取り組むイノベーション」、P.141より

これを読んだ時、本当にそうだなあと思ったんですね。実際にこの部分は第二部ですが、リフレーミングというのはある種のフレーム、つまり固定された枠組みや考えたというある種の見方ですよね、それを「リ」=再び考える。リデザインとか色々な「リ」ってありますけど、「リ」スキリングとかもですね。

そういう感じで再度見直す=見直すとは再び同じ見方をするのでなく、違う視点で問い直すことってイメージです。そうやって問い直す、まさにこうやってイノベーションをやればいいみたいなものは多分なくて、仮にそうであってもそこを再度疑っていく、さらに問い直し、それがリサーチを積み上げる、またはある種の仮説を捨てるでもいいし、そういう積み上げでしかないと。

まあそんなことを言っていると解釈しました。

ここで「断続的に生成」というのもかなり適している表現で、実際にアイデアは何か偶発的に訪れると言いたいのですが、偶発以前にあらゆるインプットや思考の結果でしかない、というのが実際だと考えています。偶発とはアイデアの出し方でも何度も触れていますが、意識的なリサーチ、意識的な問い直しがあって、始めてある種別の事に触れた時に(それがある種のリフレーミングのトリガー、きっかけというだけであってそれ以外ではない)アイデアが閃くのかなという話です。

さらにそれは断続的に生成された結果というよりも、プロセスなので、色々なクライアント然り、当事者然り、自分たちも含めてそのやり取りをまるっと含めてそこで「柔軟」に考えるしか到達できないというのは、もうその通りだろうなと感じたんですね。

ここに近道はないからこそ、この本書のタイトルは「地道」なんですね。

リサーチとは

もう一つ行きましょう。

(略)リサーチとは無数の選択肢のなかからその一つひとつを毎回選んでいくような作業である。そこには「正解」はなく、常時「オルタナティブ」な選択肢が想定される。この、常にオルタナティブが張りついた選択を引き受け続けることこそが、変革や革新を実現する一歩なのではないかと思うし、(略)

「地道に取り組むイノベーション」、P.147より

これも先の言い換えかもしれませんが、リサーチってなんだろうかって考えることがあってまあその通りだなって話です(笑)

つまり、リサーチって正解はないんですね。実際に僕が仕事でやるところでも、これでやってみますというけどそれが「正解」保証はないので、それで筋が良いところへいけるかの旅でしかない。ミスることもあるので、それがリスクですね。

オルタナティブっていうのは代替とか違うものってことですけど、常に違う選択肢があるし、色々あるんだけど、その他の可能性があるんだけどというのを引き受ける(対話の場ではありえる言葉ですが、対話でないとあまり使わない言葉かもですね)必要があると。というかそれを引き受けるからこそ、正解はないと言える態度とつながり、かつそれを持続していくことってまあ「楽」じゃないんですね。

ここでも地道だなと感じます。

何か簡単で楽で虫の良いものはないw

それだけなんですね。それを分かっている人が読むと再確認できるのですが、問題はこの本はそういう「ガツン」と頭に来ることはないと思っていて。なぜかというと、問題意識がある人が読むので納得や理解が深まると。つまり「あー楽したいな」「イノベーションちょちょっとやりたいな」って人はまず読まないオーラがあります(笑)なので、まあそれはもうしょうがないと思ったりしました。別に偉そうに言ってるわけではなく。

考えていくと、自分の手法や考えをただ再現するとか、何か具体的な方法があるとかでないんですね。プロセスや現場、対話を通して思考の積み重ね、または受け入れて編集していく形を指すわけです。それって決まりきった言葉で表せないし、ある種表した途端消えてくという泡のような儚さもありますよね。

こうすればいいとかって単一的な話や、ある種の正解があるのでなく、毎回毎度面倒臭くても繰り返してどうかを考えていくこと、それが地道にやるということなんだと痛感したわけです。

これと逆というか、プログラムってあります。プログラミングですよね。これって再現性が高く何度も出来るものです。だからプログラムの価値ってそれを手に入れてしまえば攻略できるって思いがちですが、作る人なら分かりますが、プログラミングが出来るのとプログラムを利用するのは月とスッポンなわけですね(笑)

アイデアもリサーチも、そして何か生み出すことも、やっている人の言葉は重過ぎます。だからこそ、すごいことをやっているんだぞみたいなことでなく、プログラムを利用する感覚でプログラミングって出来ないように(そういう視点はオッケーですけど、実は違うのでその事実性を問題としたいということ)、何か作ることも生み出すことも、まあ結果的に地道であり、地味になるなあと。

逆に地道でないちょちょっと系のものって胡散臭いですし、土台もないのですぐ吹き飛ぶし、バレてしまうんですね。それをある種証明したと考えるとめちゃくちゃ価値があるとも言えます。

副音声的な物も面白い

本がリリースされた後に副読本というか、副音声みたいな、著者たちの振り返りもかなり面白いです。読まないと入りづらいかもですが、逆に読んでない人が読んであー面白いなと思えば買ってみましょう(笑)

じみイノ著者達による相互解読#1 第1部「イノベーションに隠された現場の格闘」

「地道に取り組むイノベーション」著者達による相互解読#2 第2部「UCI Lab.と人類学者による対話と協働」

「地道に取り組むイノベーション」著者達による相互解読#3 第3部「制度としてのUCI Lab.」

アイデア創造のメタ認知研究も面白い

さらに、面白いことをやっていて、そういうアイデア創造って難しそうだし、毎回同じことをやってないけど、どうすれば精度を上げられるかってことで、取り組みが「つくる」をわかるプロジェクトです。

これはメタ的に見る、つまり振り返り、客観視することで「意図してない」ものを拾ったりそこから価値を見出すのが狙いです。面白いですね。こんな取り組みはあまり見たことがないです。

強いて言えば僕がアイデア発想法としてアイデアを出すやり方を自分でやってみて「あれ、こんなのなかなか思いつかないな」って(笑)自分で感じるものと似ていますね。

なかなか読み応えがあるプロジェクトです。

結局ですけど、安易な正解、マニュアルとか、パターンってのがないって考えればこれらはほぼほぼ妥当であり、それこそ「特段目新しいものではない」と感じると思うんですね。だから何もしなくていいとか、その通りやればいいってことでもない。その理想と現実のブレをまさに惹き付ける、受け入れることでしか何も進まないなということを再確認できた良書でした。

筆者プロフィール

シゴトクリエイター 大橋 弘宜
シゴトクリエイター 大橋 弘宜
「シゴクリ」運営者。アイデアの力でお客様に貢献するゼロイチ大好きアイデアマン。ビジネスアイデア相談実績等は200超を超える。好きな言葉は三方良し。詳しい自己紹介仕事実績も合わせてご覧ください。お仕事メニューお問い合わせはお気軽にどうぞ。

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