ぼんたが仕掛けるドリンク広告企画が秀逸すぎる

目次
ネタ元
居酒屋のドリンクで企業PR 広告費を値下げ原資にで知りました。面白いですね。
簡単に言うと、
- 居酒屋店舗内のメニューに広告を載せる
- 広告は協賛企業の名前が入ったり、分かるようになっている(シゴクリ ハイボールみたいな)
- 協賛費用=広告費用で、ドリンク自体の単価が下がる(50-100円程度)
- 割安で頼みやすくなり、企業名の広告になる
というものです。
ネーミングライツまで高くないけど、基本的にメニューの商品名部分広告となります。もちろん商品開発として、企業の雰囲気にあっているなども求められそうですね。
似たようものがありそうで実はない
このアイデア面白いけど、既にあるのでは?と思いました。調べてみると、
「カラムーチョ」が居酒屋メニューになった!! 「居酒家 土間土間]×湖池屋「カラムーチョ」 “辛ウマ”やみつきコラボメニューが 期間限定で登場!!
薄桜鬼真改×はなの舞
全国居酒屋1620店舗 「ヱヴァ:Q」キャンペーン 登場人物と名前一致でディスカウント
基本的に大手系のものが多くて参考にならないかもというところです(笑)
つまり、地域店などで地域のためにという場合、話題になってもローカルなところで終わり、そこまで大きくならないのかなと。あと結果的に広告なので長期間できないということではないかと考えました。
少数店舗の飲食店がコラボする方法
既存例がうまく見つからなかったですが、非常に興味深い記事がありました。
数店舗の飲食店が、お金をかけず様々な企業やブランドとコラボレーションする方法
小さな店舗や店でも色々とコラボできるのではないかということを想定しているので、これを参考にして考えてみましょう。
費用は最小限に抑える
同記事にも書かれています通り、全国チェーンのキャンペーンは面白いですが、費用も結構な金額のはずです。小さな個人経営のお店などにそんな費用はありません。
だからこそ、お金は最小限で、日々使っている広告宣伝費で出来るレベルにします。
「広告宣伝費」って実際いくら必要なのか?を参考にすると、1店舗で平均2-3万円程度とします。定額で使わないとすれば、1年貯めれば1店舗に20-30万一気に使えるイメージです。
イベントでコラボする
同記事では、日本酒コンなどを結婚相談事業者とコラボするという事例があります。当然適当に出来るものではなく、相手企業のメリット、ターゲットを考えた上で合致したといえるでしょう。またイベント自体は居酒屋であれば日中の空いた時間を収益化という点も見逃せません。
この掛け算のアイデアが最も出にくいところのような気がします。自店舗がターゲットとしている客層に響きそうなものを考えると、男性40-50代が多いから、タバコとかになっちゃうみたいな話です。それが駄目なわけではないと思います。
そこは店のコンセプトと、既存客か新規客かのターゲットなどで全く変わりそうです。新規客を増やしたいのであれば、何かきっかけになるものを考える必要があります。面白い系か、わくわく系か、非日常なものか、そこがアイデア次第となりそうです。
例えば、魚が美味しい居酒屋さんで月に1回、魚講座をやるとか、魚クイズでもいいですよね。土日に開催して、ファミリー層(家族連れでも来れる居酒屋)を開拓します。1店舗だと手狭でちょっと入りづらいという人も多いでしょうから、自店舗でそれぞれ「クイズ」企画にするとか、または他社と一緒に「それぞれのクイズ」を出してみるなどです。この時、地元企業で消しゴムメーカーがあったら「魚の消しゴム」とかを協賛してもらうなどです。
そもそもファミリー層向けの受け入れ態勢がなければ、意味がない企画ですが、例えばということで。メインの40-50代男性を集客するには、今何を欲しているかを考え抜くしかありません。タバコでも電子タバコなどの試飲会とかやれば既にたくさんありそうですが、結構興味がある人がいそうですね。
SNSなどインターネットを活用する前提がある
インターネットを使った発信をすでにしてないと辛い感じもします。
例えば、LINEで発信するなどです。これから始めてすぐに結果を出すのは厳しそうです。ただ、続けていってそこからSNSで拡散されたり話題になるという確率を高めていくことになります。
上の魚クイズイベントなら、その様子を写真で撮ってSNSにアップする、魚講師は店長だけど、子ども先生が詳しかったとか、そういうのはイベントの醍醐味であり、ライブ感が伝わりますよね。動画で短めのものをアップするのもいいですね。
インターネット自体はコストをかけずに使えるので使わない手はないということですね。
人気記事:居酒屋の集客イベントで使える7つのアイデアも参考にしてみてください。
サブスクリプションを取り入れるのも面白そう
小さな居酒屋で試した月額定額制「サブスクリプション」の事例が興味深いです。
ただサブスク自体をやれば必ず儲かるとかそういう話ではないのでちゃんと考えた上でやってくださいということですね。とくに上の記事で書かれているのは、お客さんの利用頻度から考えられるバランスです。
月額定額でドリンク飲み放題ということなので、飲み放題を使ってつまみをちょっとしか食べないで、ずっと居ることもできるわけです。そうすると、結果的にサブスクをしてないお客さんの単価よりも低くなってしまい経営圧迫となりかねません。
とはいえ、フード単価を高くしすぎると、「ドリンクはいいけど、フード頼めないじゃん」となってこれも微妙になります。
そういう意味で結構難しいアイデアだと思いました。例えば導入して辞めるとかも結構大変(失敗するとお客さんが離れていく、信頼を失うため)ですから、十分テストした上でになりそうですね。
知名度不足で人材採用に困る地元企業のための企画
話を戻します。
ネタ元にあった広告メニューを仕掛けたのは株式会社ぼんたという福井の会社です。飲食事業が中心です。
社長ブログに載っていた情報が詳しいです。オオカベガラス✖️くずし割烹ぼんたにあるものをまとめると、
- クライアントはオオカベガラスホールディングス
- オオカベハイボールという商品名で提供
- ガラス色=ガリガリ君ソーダ味の色なので、ガリガリ君が入ったハイボールという商品
- ドリンクメニューの左上枠にオオカベハイボールアイキャッチを設置(画像はブログにあり)。企業戦士=サラリーマン応援企画というテイスト。
- 価格は450円が350円の100円引き。ただ100円プラスで700mlのビッグサイズに。
- 裏面メニューにオオカベガラスの紹介があり、お客さんが何だろ?と思って見るはず。
という形の企画です。
ここからが興味深く、
- オオカベグラスはガラス・鏡をウェブで販売しているEC事業者
- 知名度でいえば、ぼんたの方が圧倒的に知られている(福井県の人にとって)。オオカベグラスって何?という感じのはず。
- EC事業=ネットだから、地元知名度は売上自体には関係ないが、新卒採用など人材を雇う場合に影響が大きい
- 就活で知らない企業に行く人はあまりいない。だから社名自体を知ってもらうのは大いに意味がある。つまり、新卒採用等の人材採用にプラスにするための企画といえる
- 福井新聞の1面で広告すると120万円かかるが、ターゲットを絞り込んだ飲食店(立地や業態)でクライアントが訴求したい相手に出せば三方良しとなる
- 1杯100円(一人が見る)として、毎月100杯以上でるので1万円からの成果報酬に近いモデルで広告が出来る
という記事を読んで、ネタ元を読んだ時は通り過ぎていたのですが、
(前略)
斎藤敏幸社長は「福井には知名度不足で人材採用に苦労する企業が多く、安価な広告としての需要が見込める」と話している。
(居酒屋のドリンクで企業PR 広告費を値下げ原資により引用)
というコメントに納得が出来ました。もちろんEC事業でなく、単に宣伝したいというのもあるわけでしょうが、人材採用に対して知名度不足がネックと分かっているならば、まず知ってもらうことが効果的と言えるでしょう。
EC事業をはじめとすると事業者が興味を持って知名度アップで人材採用がしやすくなることを狙いそうです。また記事にはユニフォームネクストという会社が興味をということがさらっと書かれていましたが、福井の会社であり、かつEC事業者ということでこれはバッチリという感じですね。
三方良しの秀逸な企画
ぼんたの広告メニュー企画はおそらく真似しようと思えばできるでしょう。
ただ、福井県の地元企業の課題(人材採用において知名度不足で取れない)を知っていて、かつ自前のリソース(飲食店は細かい客層が分かれていてターゲティングできる)を踏まえた上での企画となります。
逆に言えば、企業のニーズが読み取れてない、その解決策としてリソースがないのであれば出来ないわけです。そこを無理にやるとまず失敗するでしょう。知名度の話は分かりやすく、「相対的に飲食店の知名度のほうが、クライアントより高い」という点もポイントですね。
抽象化してしまえば、クライアントの課題を踏まえ、解決策としてアイデアを練って形にしたもの(笑)でしかないのですが、それを居酒屋で、広告という企画で実現したこのアイデアは非常に秀逸なものだと感じました。
各プレイヤーのメリット
社長ブログにもありますが、丁寧に考えてみましょう。
本企画を行うことで、以下のプレイヤーはメリットがありそうです。
クライアント企業
- 人材採用において知名度不足で門前払いされる点がクリアになる。まず知っているところで有利になる
- 宣伝費用を抑えて低価格でアピールできる
- 指定した飲食店などターゲットを明確にして訴求できるので、無駄打ちが減る
- メニュー広告なので「来店して、ドリンクを頼む」人に狙い撃ちできる。また裏面を見るなど自社認知に貢献する(コンバージョンとしては、クライアントサイト閲覧増加者数÷商品の注文数とかで、大体つかめそう。もちろん注文した人がみんな見るわけではないが、認知度という意味で「商品名を発声すること」「仲間内で話題にすること」で十分覚えられそう)
- 結果的に低価格で、かつ効果が期待できる。
飲食店側
- 商品の一部を変更するだけなので、提供オペレーションやスタッフ教育などの追加コストはない
- 商品価格を下げることになるが、値引きは飲食店負担でなく、広告費としてクライアント側負担のため、利益構造は変わらない。
- 構造は変わらないが、価格が下がるため売れやすくなる(他定価メニューよりも)
- メディア掲載、取材などで店自体の認知度があがり、集客につながりやすい。
- 商品開発に特殊な検証をするとかでない限り、商品開発自体にコストはほとんど変わらない(むしろ現場スタッフのアイデアが採用されると、意識を高めてくれる可能性も)
- 地元企業を応援する企画でもあるので、スタッフや店もやりやすい
お客側
- 割安で商品を楽しむことができる
- 割安だが、何か負担があるわけでない(広告のため)
- 広告だから何かを売りつけられるとか、要らないグッズをもらうとかそういう制約はない
- 地元企業や地元を知るということで、逆に「広告だけど、地元を知るネタ」になって面白がる人もいる
- 他の店にも行くけど、面白いことやってるからまた誰か連れてくるかという誘引にもなる
- 地元企業を知ることが結果的に地元企業のためになるので、地域貢献的なことにもなりえる
誰も損しない企画ということですね。
今までなかった理由を再度考える
ここまでを踏まえて、今までこのような企画がなかった、またはあまり続かなかったのかを再度考えてみました。
- 広告代理店などを通すなど(居酒屋→代理店→クライアント)を通して結果的に広告費用が高くなってしまった
- 見合う効果が得られなかった。例えば都会型の店舗には色々な客層が来ており、ターゲットを絞れなかった。または絞ったところで、それが課題解決に結びつなかなった。効果測定がしづらいというのはありそうですね。
- 広告企画自体を居酒屋事業者、飲食店事業者が仕掛けるというアイデアがなかったか、あっても結果的に実行に至らなかった
- 広告出稿など企画・制作・コンバージョン計測などの流れを考えると手間がかかりすぎると考えやったが続かなかった。代理店事業をやるわけではないものの、企画立案から実行までやってというのは思った以上に手間です。
- すかいらーくインストアメディアにあるような、すかいらーくで行えるテーブルステッカーやテーブルスタンドが既存では近い。これも広告代理店が行っていて大手チェーンのため予算規模は相当高くなってしまう。
- コロンブスの卵で、少数店舗で行える、低予算広告企画というのは「広告ビジネス」としては成り立ちづらい(成り立たない)ので考える人がいなかった。
というところかなあと思いました。
今回のぼんたの例では、飲食店側が広告をする時にはまるというか考えそうなこととして、広告費を取ってそれ単体でビジネスとする考え方です。もちろんそれはそれでいいのですが、それは広告業が本業である人の視点かもしれません。例えば新聞掲載の広告費用が高いと感じるのはそれだけの広告効果があるというよりも、「リーチする人が多い」からという「伝える手間を省く」価値を価格に転じているからです。
福井新聞は20万部発行で普及率73%というシェアです。20万人というより20万世帯に配布していると考えると、1世帯あたり3人いるとしても、60万人です。1面が120万ですが、60万が1面は見るとすると、一人あたり2円ということで安い気がします。が、もちろん確実に伝わるとかそういうことでなく広告ですからね。
飲食店側は価格割引による集客が出来るということがメリットになります。つまり、広告費で稼ぐのでなく、集客で稼ぐ。つまり本業は飲食店にお客さんが来てもらうことなので、そちらを促進することで良しとしているわけですね。
ここでも何がメリットだと嬉しいか、喜ぶかを考え抜くことで、集客=広告費を出せばいいということでないアイデアが見えてきます。
つまり、ぼんたの視点でいえば、地元企業の課題を解決して喜んでもらいながら、お金を使わずにお客さんが集客できることになります。一石三鳥という感じですね。
おわりに
居酒屋で集客とは一体何か。集客するアイデアは何か。
実際はあなたが感じている課題や知っている問題点、不満をまず掴みます。自分だけでなく、人、お客さんが持っているものもあるぞと。それをどう解決できるだろうか、軽減させられるだろうかなどを突き詰めていきます。そういう考えの延長に、「人が来てくれる」があるのかなと感じました。つまり、企画や形になったアイデア、結果があるということですね。
今回のぼんたの企画も簡単に出来たとは思えません。仮に出来たとしても、今までの試みの蓄積があったり、当然、地元企業や地域を見る視点があるからこそ出来たといっていいでしょう。
面白いネタありがとうございました!
筆者プロフィール

- ビジネスアイデアメディア「シゴクリ」運営者。生まれてくるアイデアをビジネス化出来ないかを考え続け、アイデアの力でお客様に貢献するゼロイチ大好きアイデアマン。ビジネスアイデア相談やビジネス企画の実績多数。好きな言葉は三方良し。詳しい自己紹介、仕事実績も合わせてご覧ください。お仕事メニューやお問い合わせはお気軽にどうぞ。
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