ランサーズとクラウドワークスの戦略違い

クラウドソーシングでとくに総合系と言われる、つまり何でもというか色々揃っているという意味で、ランサーズとクラウドワークスが挙げられます。

それで、IR資料とか読めばーというところで、色々両者の考え方や戦略が違うのが面白いかなと。そういう視点も含めつつ、IR資料読めば色々分かる、しかもそれらは公開されているので、あなたが投資家でなくても見るべきというか、楽しむべきということが分かれば嬉しいです。

見ているIRデータとは、ランサーズクラウドワークスという感じです。

受注者=ワーカーはいくら稼いでいるのか

まずは下世話ではないですけど、お金の話をしましょう。これだけ知りたい人もいるかもしれません。実はこれデータが出ています。もちろん個別の人の売上なんて分からないので、平均値に過ぎません。しかしそれだけでも目安になるのではないでしょうか。

クラウドワークスの受注者平均額は月4,250円

クラウドワークスの2021年9月期第3四半期決算説明資料から見てみます。まず、ワーカーは450万人です。しれっとテイクレート=手数料ですが、2019年で20.4%が2020年で21.5%になんで上がったなどの細かいツッコミはありますが、そういうのはあとで調べてみましょう。

P.6では、受注ワーカーが25.1万人で、それらワーカーの「年間」契約額は5.1万円で、これらを掛け算したのが総契約金額で127.7億円です。膨大ですけど、1万×1万が1億ですから、これくらいの数値になると。ちなみに、この127.7億円はクライアント側の発注契約額と合致するわけです。

この時点で、あれ450万人ワーカーがいるのに、受注ワーカーは25万人でしたよね?25万÷450万=0.05となり、5%程度です。つまり、受注している人は5%程度足らずとなります。ここで知識というか当然として、450万人は登録者でありアクティブな人ではないはずです。資料にあれば計算できますけど、少なくとも登録者450万人がいて、「みんな」受注しているわけではないというか一部ですよね、というのが分かります。

そして、25万人も受注しているのかと思うかどうかは分からないです。つまり、受注額が5.1万円ですから、年ですから、月でいえば、5.1万円÷12ヶ月=0.425万円/月となります。月4250円です。もちろんこれは平均ですからそこだけ留意してください。平均の留意とは、めちゃくちゃ偏っているデータであれば、「水深30cm」で溺れるわけです。3mとか深いところもあれば、10cmのところもある。箇所数によりますが、3m+10cm=3.1mですよね、これを平均出すと1.55mとなる。さらに20cmの箇所もあれば・・・3.3m÷3=1.1mとなります。からくりが見えますよね?もちろん、この数値操作を「平均」がしているわけではないです。ただ平均値=状況が分かるわけではない、ということを留意してねってことです。当然機密性もあるわけで、そこを開示できないのもあるので、これくらいが限度かなと思います。

というわけで、127億の売上があっても、25万人で均すと、年5万円くらいで、月だと4000円ちょっとという感じでした。

くどいですが、めちゃくちゃ稼ぐ例えば1000万受注/年の人もここには入っているしそれ以上もある。逆に25万人の中で、タスクなど数円のものしかやってないと、月10円とかもあるという想像が大事ですよねということです。

ランサーズは信頼ランサー(受注額8割)では1.9万円/月

ランサーズは、2022年3月期第2四半期決算説明資料を見てみましょう。なのですが、これぱっと見るとクラウドワークスみたいに受注額って書いてないんですよね。

ランサーズは事業が3つあって、いわゆるクラウドソーシング事業で企業が個人等に直接マッチング出来るのは、マーケットプレイス事業と言えそうです。2Qでは、マーケットプレイス事業の流通額が1,586百万円=15億程度です。ちなみに、他はマネージドサービスがランサーズが仲介してつなげる、テックエージェントは同じようですが人材支援とあるのでおそらく派遣に近いのでしょうね。それぞれ手数料が違っていて、マネージドが高めで32%とか、テックエージェントは15%、マーケットプレイスはまあ18,19%とありますが2割ですよね。マネージドは撤退するようですね。

なので、四半期では15億円が流通額でした。これは売上ではないので、実際この2割の3億円がランサーズ側の売上です。単純にこの4倍で考えるか、あとは2020年度分の実績を取るかだけですね。

4倍なら60億円が流通額=契約額となります。2021年度実績だとP.49にセグメント別業績推移があるので、2021年3月期のマーケットプレイス事業の流通総額を見てみると、1,176+1,308+1,472+1,558=5,514となるので、まあ55億という感じです。

あとはワーカー数です。ランサーズ資料では開示されてないように見えます。P.12にある信頼ランサーは認定ランサーやシルバーやブロンズなどの一定の活動をした人の合計値のようですが、確かにアクティブといえるのでこの数値で出すのが妥当かもしれません。この数値は今四半期で211百人=2万1100人となっています。この数を見て、かなりクラウドワークスの数と比べると少なくなっていますが、比較しづらいですよね。

ただ、この数値で考えれば、年60億円÷2.1万人=285,714円/人となるので、一人あたり平均受注額は28万円くらいになります。月でいえば、28万÷12ヶ月=2.3万円/月となります。

と、思ったらログミー書き起こしで、130万人と言われているのでこのデータで問題ないでしょう。アクティブな受注ユーザー数は見えないですけどね。ただ、130万人いてここでいう信頼ランサーが2万人ですと、2%程度となりますよね。クラウドワークスも受注している人は登録者の5%ですから、数%の人がしっかりやれているという肌感は持ったほうが良さそうです。

P.74では信頼ランサーの定義の参考情報がありまして、ここから信頼ランサーは流通総額の80%とありました。総額とあらうので、ここでは年60億とすると48億円が該当します。ということは、P.12の2.1万人とすると、48億÷2.1万人=228,571円/人となるので、この値は信頼出来るものとなりそうです。これは信頼ランサーの値ですが、8割カバーしていると考えると、この数字だけで良さそうです。よって、月では1.9万円/月くらいが妥当となりそうです。

整理してみると?

見やすく再度まとめてみます。

クラウドワークス:登録者450万人、受注ワーカー25万人、平均受注額年5.1万円

ランサーズ:登録者数130万人、受注ワーカー数不明、信頼ランサー数2.1万人、信頼ランサーの平均受注額年23万円

となります。クラウドワークスが登録者数で圧倒していて、ランサーズは数ではかなり押されています。だからこそかは分かりませんが、信頼ランサーなど一人あたりの専門性や受注額を高めるという感じ、または信頼ランサーを増やすというように見えます。ただ留意としては、この信頼ランサー数=受注数とは言えないので、おそらく2.1万人全部が受注しているわけではないのかなとも言えます。

また、ランサーズの信頼ランサーはそもそも130万人いて2.1万人とは2%に過ぎませんよね。先のIR資料では、P.12で、信頼ランサー一人当たりの受注額がそうでないランサーの約15倍となっています。

おそらくですが、クラウドワークス程度に受注割合はあるとすると、5%程度はあると。そう考えると、130万×5%=6.5万人程度は受注者がいるのではないかと。仮に、受注者数6.5万人として、2.1万人の信頼ランサーの半分程度の1万人が受注者として、残り5.5万人をそれ以外のランサーとして推計してみましょう。

・信頼ランサー受注数は1万人で、56億円だと、56万円/年
・それ以外のランサーは、受注者数5.5万人で、3.75億円だと6,800円/年となります。

で、ここで56万円と6,800円は、82倍の開きがあるので気持ち悪いですが、これは推計として、信頼ランサーの獲得金額とそうでないランサーでの獲得金額だけを56億円:4億円というように15倍で分けたからですね。その時受注者数が前者は1万人としているのに、後者は5.5万人としているから、15×5.5=82倍となりますからね。

推計なのでどうしようかというところでは、これも仮ですが、やはり100人いた時に信頼ランサーは2割程度でいいと思っていて残り8割はそれ以外というのを使ってみたいです。これは肌感です。なので、4倍-5倍の人数差はあるとしたいですね。

よって、15倍の報酬額の差があるのは事実ということで、人数差が5倍とします。よって、その他のランサーが年6,800円ではなくその5倍そして、34,000円とすると塩梅が良くなりそうです。

よって、

・信頼ランサー受注者数1万人(全信頼ランサー2.1万人の半分程度)×一人当たり報酬想定年56万円
・その他のランサー受注者数5.5万人(全その他のランサーは不明)×一人当たり報酬想定年34,000円

とすると、56万÷34,000=16倍程度なので、ちょっとずれてますけど推計なのでこの程度で勘弁してください。

これをもってどちらが稼げるかは不明です。一見するとランサーズの方が高そうですけど、それも信頼ランサーで受注している人がというだけです。メルカリとかで2秒に1回売れているみたいなのがあったかと思いますけど、あれも売れている人がというフィルタがあるはずでそうでないならそんなに売れない、全然売れない人もいるわけです。

でも、統合すれば、受注している人は2%~5%程度でしかなく(事実)、その金額も年ベースで5万から数十万が平均ということになります。これではあまり参考値にならないものの、平均でしかないですから。

仮に数百万円稼いでいる人がいるとしますと、それらの人は外れ値であるし、また数円とか数百円とかも外れ値となりますよね。

まあお金の話はこれくらいにしておきましょう(笑)気になる人は自分でも計算してみてください。ただ、ランサーズのデータは開示が少ないので推計ということで目安程度でご勘弁を。

クライアント数はどうなのか

もう一つ気になる人も多いであろう案件数などです。たまに案件数がどうとかってことで、案件数をサービスサイトに出ているものを参考値とする人もいますが、正直これは微妙でしょう。なぜなら、1000件あっても、自分に合う仕事がないならやはりきついからですね。

そういう意味でクライアント数=多くは企業数ですが、これを比較すると面白いものになるかもしれません。

クラウドワークス

先の資料では登録者数ですが74万社となっています。それで発注社数は4.2万社で、年は30.2万円となっています。これは先の127億円ということで合致しているところですね。これも4.2万÷74万=5%です。ということは、先もワーカーも5%でしたから、たまたまでしょうが、発注者側の会社数と、ワーカーの受注数の割合は5%で一致するんですね。この意味は分かりませんが、実際に使っている人というか、マッチしたのが5%だったというだけですね。実際は12ヶ月あって、1回でも使った人がカウントされます。両者使う人もいるはずですので。

ランサーズ

こちらはIR資料では新規クライアント数などのグラフはあるものの、数字は出ていませんので、不明となります。

戦略の違い

タイトルに挙げましたが、ざっと言えそうなことだけ書いてみます。

クラウドワークスはごりごり成長させていく

No.1だからもありますが、それを無視してもまだまだこのクラウドソーシング市場は成長余地があると見込んでいるわけです。また前は上場でも赤字のようなところを突かれましたが、投資ということで計算通りとなっていて、黒字化となっていて今後も成長と黒字というさらに集中投資ができると言えそうです。

ランサーズは個のエンパワメント

このエンパワメントはかなり曖昧ですが、端的にいえば個のランサーが稼げるとか、専門知識を活かせるとかそういうことになるかなと。暗にクラウドワークスとは違うというか、違いを出しているとも言えますが、クラウドワークスでのワーカーが専門性がないかどうかは判断できなくて、総合感が強いクラウドワークスで、専門性を強める「総合型」ランサーズみたいな感じになります。

両者共通

面白いことにどちらも受託事業は撤退ということが面白いなと。あとは、DXなどの時代の流れとかはそのまま両者も採用しますし、集中投資や成長もというところでしょう。

つまり食い合うみたいなことはなくて、市場成長するので両者共にって感じは読めます。ただ、やはりNo.1でゴリゴリ伸ばすのとNo.2で違いを出していくか隙きがあれば狙うみたいなことってやはり競争の面白さなのでどうなっていくかは注視したいですね。

その他の方向性

これ僕が感じるところであって、実際はどうかはあるのでしょうが、やはりマーケティング的にLTVなり指標をゴリゴリ出しているクラウドワークスの方が面白いですよね。そういう数値上げるのかとか。ただ、個人的にですが流通総額であったり獲得額を何人分の雇用を生み出したはあまり好きじゃないです(笑)確かに数値変換すればそのままなんですけど、それでどうなのってツッコミが出来る余地が常にあるので。

それに比べるとランサーはまあ僕が認定ランサーというのは隠していることでもないのですが、個のランサーとかっていう支援が「適切」とかはおいておいて、まあやっているなあと。クラウドワークスもやっているかもしれませんが、なんかそういう感じではないと。

あと、ランサーズはShopifyなりMentaなり外部連携みたいな形で(Mentaは買収しているので内ですけどね)外への循環を意識しているところは結構好きです。それがうまくやれているかは別として。

クラウドワークスはそういうの無視してプラットフォームで回す感じですかね。まあそこで回せるのでなんかごちゃごちゃやらなくていいわけですし、そのままなんですけど。

こういうと怒られるかもですが、ニッチ感がこの両者がある時にランサーズだと思うので(規模はニッチではないですが)、そっちが面白そうだなというところになります。まあ僕の性格として、No.1サービスだ!どや!みたいなのが好きじゃないだけってのもあります。

両者使っていると使い分けとしてやはり見える景色も違うのですが、圧倒的にクラウドワークスの方が発注はしやすいなあとか(笑)ワーカー視点でも案件は似ているようで違うよなあとか(たまに重なりもありますが多くは違う、2つ登録面倒ですしね)。

だから両者登録している人がいるわけですけど、多分クラウドワークスの方が楽だからそっちに流れるのでははないか説、とかもあります。まあこれも実際はどうかは不明で、僕の考えでしかないですね。

以上戦略としては、かなり今後面白そうです。少なくとも市場が成長するうちはどこか第三のスタートアップとか統合とかがあるとか、外国からご―ってくるみたいなことがないかぎりしばらく成長していくでしょう。その後ですよね。その後成長が詰まりそうなときとかどうするか。そのあたりが面白そうですね。

テイクレートの違いについて

これは単純に事業においてクラウドワークスなら22.4%は消費税込みで、20%に対して22%なのかな?とか想像です。また他事業が88.2%という高いものですがこれはほぼ売上がないので無視で良さそうです。ただ、それによってテイクレートは22.9%となっていました。

ランサーズも3事業あり、そのテイクレートが違うのでマーケットプレイス事業の2割だけではないってことでした。これは知っておくといいかはおいておいて、一つの事業だけではないが、基本手数料ビジネスをやっているという理解でいいかもしれないですね。

どっちを使えばいいみたいな話

ワーカー視点ではどっちを使ったらいいのかってあるのですが、基本的に両方性質が異なりつつあるので、No.1とNo.2ってことですね、両方使ったら方がいいんじゃないかって僕は思います。

ところで、ランサーズのほうが先発でクラウドソーシングをやってきたわけですが、クラウドワークスのマーケティング手法もありつつ、抜かれたんですよね。

クラウドワークスの先のP.3では、思い切り自社が152億円の流通総額でNo.1だよと言っています。で、No.2はランサーズで81億円だったと。これだけ見ると2倍近い差なので、きつくなります。

話はこれで終われば分かりやすいですが、そうでなくて先の調べでは、クラウドワークスは月4,000円ちょっとですが、ランサーズは8割で絞っていますが信頼ランサーだと約2万円でした。4-5倍も開きがあるわけですが、これもクラウドワークスの下部2割を切れば(外せば)かなり違ってくるのでこれだけでの比較はやや危険とも言えます。

これも推計ですが、クラウドワークスは25万人くらい受注できた人が1年でいるけれど、4000円ちょっとだった。ランサーズは多分ですが信頼ランサーでは2万人いてもおそらく半分程度の1万人、おそらく推計でしたが5万人くらいが受注していてみたいなことを考えましたが、それでも6万人くらいが妥当ではないか。つまり受注者ベースでいえば4分の1くらいまで下がるんですよね。これは推計なのでご留意を。

となると、4-5倍稼げると思っても、受注者として入れる=案件が取れるということも4-5倍低いわけで、トータルで変わらないのではないかー?とも感じます。

おわりに

ちょっと断片的にもなりましたが、IR資料見ると面白いよってこととか、上場企業調べると面白いよねってことが伝われば嬉しいです。

まあ今回の調べから、両者は似ている部分もあるようで違う部分もあると。その上でお金的なところも、かなりワーカー視点で見てもデータはあるけれど、判断しづらいなあというところでした。

ネットワーク効果もあるので、まあ多い方を使う、つまりクラウドワークスを使う方がまず先になりがちというところでどう考えるかですよね。

筆者プロフィール

シゴトクリエイター 大橋 弘宜
シゴトクリエイター 大橋 弘宜
「シゴクリ」運営者。アイデアの力でお客様に貢献するゼロイチ大好きアイデアマン。ビジネスアイデア相談実績等は200超を超える。好きな言葉は三方良し。詳しい自己紹介仕事実績も合わせてご覧ください。お仕事メニューお問い合わせはお気軽にどうぞ。

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