具体と抽象で考えるコミュニケーションの仕方

何かを考える時にそれが具体か抽象かなんて考えることは稀ですが、何かを伝える時に、とくにアイデアでコミュニケーションする場合は相当意識していることに気づきました。

今回は、具体的とは何か、抽象的とは何か。そのあたりを考えて、最終的には伝わるコミュニケーションというものは何かを考えてみます。

きっかけ

大先輩とカジュアルに話していて、そういえばこんな本あるよということでおすすめされました。正確にはおすすめでなく、あるという情報共有です。大先輩は未読のようでした。

GoogleBooksか、なかみ検索で少し読めたので面白そうだと思い買ってみました。

獲ようとした学び

読んでみようと思ったのは、はじめにあたりで書かれている話です。なお「獲よう」は学びを意識的に得るという意味で使ってみました。

引用すると、

 本書は主に、二つのタイプの想定読者を対象に書いています。

 まず、このような抽象概念を扱う思考力を高めて、発想力や理解力を向上させたいと思う読者です。「具体と抽象」という概念は、学校教育でも根本になっている考え方だと思われますが、明示的にこのような形では教えられていません。したがって、日々何らかの形で実践はしていても、部分的なもので終わっている可能性が高いのです。

 本書ではそのような読者に、いま実践している考え方がどういうしくみに基づいているのかを明示するとともに、さらにそれを一つのモデルとして応用させる考え方を提示します。

 もう一つの対象層は、意識的にせよ無意識的にせよ、自ら具体と抽象という概念の往復を実践しながら、周囲の「具体レベルにのみ生きている人」とのコミュニケーションギャップに悩んでいる人です。抽象の世界というのは具体の世界と違って、見えている人にしか見えません。したがって、「見えてしまった人」が「まだ見えてない人」とコミュニケーションするのは一苦労どころの話ではありません(実際はまともに意思疎通することは、ほとんど不可能です)。

(同書、P.3-4より引用)

ここでいう想定読者では、後者として自分を設定しました。もちろん、悩んでいるはやや過剰というか言い過ぎなのですが、即効薬を求めてるのでなく、そういう著者がどういう意見を提示するかが面白いと思ったからです。何か見えれば良いという感じですね。

とくに意識しているのは、仕事の依頼文からどう読み解くか、またはこちらの提案やアイデアをどう伝えるか、これらについては何度か考察しています。

知的生産物の着地点や着地のさせ方とかがまさにそうですね。この記事だとアイデアの粒度=大きさで伝え方を変えるといいかもみたいなことを書いています。

読んでみた気づき

正直なところ、本書はおそらく想定読者の前者には益が多い感じがしました。とはいえ、ゆるい猫漫画から端的に語られる説明はさすがという感じでした。

そういう意味では「これは使えるぞ」という気付きは直接的にはそこまではなかったです。

ただ、これをきっかけに抽象と具体についてより考えるきっかけが生まれました。そういう意味で以下の2気づきをしている点で気づきを誘発してくれた本と言えます。

既に記事として、見切り発車している(笑)具体と抽象をセットで扱い、世界を理解する力をつけるで書いてしまいました。

このエントリー自体は分かりづらいと思うのですが、結果的に話すプロトコルみたいなもので「今、具体世界」とか「今抽象世界か」「あ、なんかこっちきてないぞ」みたいなことがより明確になった気がします。もちろんこれらは緩やかに流れていて具体だから良い悪い、抽象だから良い悪いって話ではもちろんありません。

世界の認識みたいなのは哲学っぽいですが、まさに哲学です。現象をどう理解するかってやっぱ面白いですよね。

そしてその余韻から生み出したのが、インプット島とアウトプット島の流れ図という記事です。具体と抽象とはそこまで関連性がないと思いつつも書いてみて思ったのは、見えるわかりやすい具体ばかり見て、抽象的な難しそうなことに触れないのはなんか損というか、見誤るなというところです。

本書自体も、分かりやすさばかり追い求めると、結局具体世界で留まってしまって、応用ができないのではないかみたいな話だと捉えました。とはいえ、抽象的に「ビジネスはお客さんのためになるものを提供すればいいのだ」といっても、それは何?となりますよね。

具体と抽象の世界を行き交うというのは、某ビジネススクールの講座を受けた時に講師であるコンサルタントがいっていた台詞です。確かに脳が疲れます。そのようなパワフルさは僕にはありませんが、思考をすると腹が減るとか、そういう再認識として面白かったですね。

具体と抽象でのコミュニケーション

簡単ですが、具体的とは何か。抽象的とは何かを書いてきます。

まず、具体的な話は分かりやすいです。何をします、こうしてください、それは違いますなどです。「ヘルプ画面を見ると、まず画面左のクリックを押してください。その次に画面が開くのを待ってください」みたいなものですね。これを抽象化すると「ヘルプ見てね」とかで終わります。実際には正確ではないですが、細かいことは省きます。

これだけでも分かるのは、具体的に説明すると分量などが多くなりかつ説明が手間です。もちろん抽象化もまとめるとか、圧縮するのも手間なんですけどね。

他には、抽象→具体は出来ても、具体→抽象ってわりと難しいです。ちゃんと確認していませんが、一方通行の話が本書であって(18章のマジックミラー)そのあたりが書かれていたはずです。もちろんこれは抽象概念が全く無い場合です。そういう人はそこまでいないはずですが、仮に抽象的な考えが分かってないと本当にこうなるはずです。

やや言語学っぽいのですが、「こんにちは」という挨拶は「こんにちは」の5文字を伝えたいわけではない、はずですよね。つまり「こんにちは」で「挨拶」として、「相手に敵意はない」とか「全く知らない人ではない」とか、何かしらの情報を与えることになります。「無言だときまずい」からというのもあるでしょう。

仮に「こんにちは」と言われて、分からない場合は「こんにちは」って何?となります。

仕事の依頼における具体と抽象

クライアント側の依頼文章の抽象度

仕事の依頼においては、クライアントであるお客さんが何を考えているかは吟味が必要です。「こんにちは」という具体的文章はないですが、「こんなアイデアを出して欲しい」といって、正直にそのまま応えるかどうかということです。

これは仕事ならよくある話です。Aが欲しいという人は、実はBがほしかった。Aは要らなかった。AではないA’でよかったとか。これは結果論というか、コミュニケーションをした上でしか分かりません。正確にいえば、誰も分かってないかもしれないのです。

つまり、仕事の依頼とは、具体性を持っているけれど、実は内容は「抽象的」であるとも言えます。むしろ具体的な依頼がある場合、その経験者か対象業務について知っているとか、知識がある場合でしょう。ですが、少しずれるだけで抽象的なり、曖昧になりよく分からなくなるものです。

提案側の理解力としての具体と抽象

またそれを受けた応答としての提案が、「具体的」かはよく求められます。依頼が抽象的だけど具体性を求められるわけですね。抽象世界を理解してないと具体性が出てこないので、文字通り具体的な依頼しか見えないことになります。これは「想像力」とも関係していると思っていて、具体→具体という感覚だとすぐ詰まります。すぐ材料がなくなるからですね。

実際は具体→抽象→具体とか、抽象→具体→抽象→具体と書いていると変に見えるかもしれませんが、実際はそんな感じで頭がぐるぐる回ります。

最近の経験からでも、クライアント的には「あえて依頼をぼかして抽象的にして、アイデアをより制約がないことから募集したかった」としても、提案する側が「曖昧な部分は分からないから切り捨てよう。抽象的だな。具体的な部分はこれだからここから考えよう」となり、あえて曖昧にした意図は無視されます。

その提案は当然クライアントの意図とはずれているのでまず採用されないでしょう。

もちろん提案側でも経験値を積んでいる仕事を考えると、表現力がある程度あるとは具体と抽象を理解しているはずです。専門性とは結果的に具体的事例を見ていってそれを端的にまとめられる抽象度を身に着けている。または抽象的な相談も具体的な経験から補足して応答できるスキルと言えますから、あえて取り上げる話題でもないかもしれません。

想像力を駆使して何をクライアントが考えているか。これを考え抜くわけですが、正解はありません。例えば「制約がある方が具体的なアイデアは出る」のも事実ですが、一方で「制約をつけることでそこから逃げられないので、違うアイデアが出ない」ことも事実です。両方を得ようとするのは結構難しいですね。例えば「制約があった場合、ない場合で出す」とかですが、多くは「欲しいアイデアがぶれているので、見合うものが得られない」ことが多そうです。

クライアントが何を言いたいかの理解度

抽象と具体だからではないですが、文章から何を言わんとしているかは極当たり前のようですが、実は出来てないと辛いです。国語能力というのもあるわけですが、何かの意志を伝達し合う上では言葉は必須だからですね。

ある事例では、仕事的な態度でなく、応募者が依頼を理解してないというケースがありました。分かってないこと自体はクライアント視点でありクライアントの書き方もあるわけです。ただ、それを差し引いても「まあ、分かる文章」であったので、クライアントも「ちょっとなあ」と思ったのでしょう。

この話、既視感がないでしょうか?デジャビューってやつですね。そうです。僕は小学生の頃で、「算数が何を言っているか分からない」みたいなことをよく感じました。中学校では数学ですが、同じことを感じたのは僕だけではないはずです。つまり、「問題文の理解が出来ない」のであれば、「そもそも正解以前の問題」となります。

これは笑い話ではありません。実際に起きています。もちろん上から目線でなく、僕が分からないことなんて山ほどありますし、そうやって汲み取れないものも多数あります。ですが、難易度が高くない文章を読み取れない場合、単に無視しているか、本当に理解できてないのどちらかです。無視ならそれは仕事の姿勢の問題で論外です。理解できてないなら国語力みたいなものの話になり、仕事以前の話になります。

文章理解が出来ないならば、次はありません。少なくともその時点で、第一印象で理解されてない=していないなら、次はありえないからですね。もちろんレアケースはありますが、大体はそこで終わりです。

もちろんこれらはアイデアを出すということでやってきたことでのアドバンテージありきの話で、だからこそ見える話でもあります。例えば依頼側も慣れてない、出す側も慣れてない場合はこういうことが普通におきるので、経験者のほうが優勢なわけです。が、これは別に不公平とか話でなく、単に経験値を積んだ、積み続けたからこその優位ですので、むしろそこまで見えることは誇りだと思っています。

わかりやすさの危険

本書またはそこから読み取った記事でもいくつか書いたのですが、分かりやすく書くとは危険な面もあります。

もちろん、「ここで書いていること自体が分からない」なら伝達という意味で僕が失敗しています。メタ的であり、抽象度が高くなっていくからです。

危険とは、つまり抽象世界がないと思ったり、そういう概念がないということです。本書にもあるようにそうするとモデル化とか技術発展は確かにしんどいと思いました。「理解度」という言葉を先程使いましたが「理解度とは・・・」みたいな説明を毎回することになります。辞書を毎回書くみたいなイメージです。しんどいですよね(笑)

「これまとめておいて」という指示があった場合どうまとめるか、何をまとめるのか、どう使うのか、いつまでかという疑問が一瞬で浮かぶ人は仕事が出来る人でしょう。一方で仕事が出来ないと言われる人は「これまとめておいて」で出てくる選択肢がほとんどなく、自分が思った一番目のことをやってしまってそれがミスリードであるケースです。確認するのが億劫だとか、そんなこともできないとか怒られるとか、その関係性はおいておいて、何を求めているかで全くやることが変わるのは基本といっていいでしょう。

指示自体が分かりやすい場合は、「これまとめておいて」でなく、「Aという資料をBのようにしてくれ。期限はCだ。Dのために使いたい。もしこうすればいいというEがあればそれも入れておいてくれ」という感じでしょうか。これは指示側の話ですが、コミュニケーションであれば、指示側が抽象的→受ける側が具体的なら、わりと成立します。しかし、具体的→具体的で慣れると、では受ける側は「具体的な指示」がないと動けません。動けないということは、具体的な指示があるまで待つことになります。指示を待つということは、自立的に動くことは厳しいです。動けないということは、当然指示をする側、もっといえば考えて仕事を作るとか、企画をするとか、そちらの世界にいけないことになります。

いけなくてもいいならそれで終わりの話ですが、仕事を作るとは結局は抽象概念を理解しつつ、それらに対して具体的指示を作れることであったり、具体的な事象からまとめられるということです。むしろそのズレが理解できてないと、「異業種にヒントがある」ということも全く意味が分からないからですね。

おわりに

友人がモデル化に熱中していてその話は面白そうでした。といって全てがモデル化できないけれど、このようにパターンにはめれば思考が楽になるとか、自分がはまっていることに気づけるみたいなのは、「今いる具体的な話」でなく、「誰かのアドバイス、客観視点などの抽象」的な見方があるからですね。

自分で脱出出来る人は抽象能力が高いといっていいでしょう。

もし、今までの話で興味を持った方は、ぜひ僕の記事なんかよりも分かりやすい本書を読んでみてください。本書自体は非常に平易にかかれているし、分かりやすくかかれています。この分かりやすさははハメルための具体でなく、抽象を分かってもらうためのわかりやすさですね(笑)

それにしても言葉って面白いですね。言葉一つとっても理解の解像度が増すのは、多分ですが抽象と具体の高度差がある人じゃないかと思います。より高い抽象と低い具体性、それこそ塔の高さと地面すれすれなどがあれば、物事の理解がよりすすみ、分かる(分からない)ことも明確になるのではないかなと思いました。

 

筆者プロフィール

シゴトクリエイター 大橋 弘宜
シゴトクリエイター 大橋 弘宜
「シゴクリ」運営者。アイデアの力でお客様に貢献するゼロイチ大好きアイデアマン。ビジネスアイデア相談実績等は200超を超える。好きな言葉は三方良し。詳しい自己紹介仕事実績も合わせてご覧ください。お仕事メニューお問い合わせはお気軽にどうぞ。

ビジネスアイデア相談窓口

ビジネスアイデアに関する、アイデアや企画、事業、起業についてカジュアルなご相談はお気軽に壁打ち可能です。

詳細はアイデア相談窓口(お仕事依頼)をご参照ください。