書籍「アイデアのつくり方」にあるアイデア出しの5段階を考えてみた

「アイデアのつくり方」という本は発想法が書かれた古典的な存在です。

本書は何度も読んでいるのですが、改めてアイデアの出し方での気づきを共有したいと思います。また僕がアイデアを出す上で非常に参考にした本でもあります。

アイデアのつくりかた

アイデアのつくり方というのは、アイデアの出し方、アイデアの生み出し方、ひらめきかたと同義です。

細かいニュアンスは日本語訳という点で若干分かりづらい点もありますが、訳し方も原書のニュアンスを考えると難しいのだろうと思いつつ、自分解釈でまとめてみました。

アイデアの出し方は5段階

手順は5つです。

1つ目は、資料集めです。インプットフェーズです。

2つ目は、集めたデータを噛み砕いて考える。

3つ目は、それらを色々組みわせる。

4つ目は、ひらめく!

5つ目は、ひらめいたものを冷静に検討する

というものです。意外に簡単だと感じますか?そうでもない?

一つずつ見ていきましょう。小見出しの括弧書きにある「意識」「無意識」とかは各段階における意識状態です(笑)

1段階:資料あつめ(意識)

本当に何もないところからアイデアが生まれることはありません。知識、経験、感じたことなど様々な過去から現在までの蓄積こそが宝です。

資料というのはここではインプットした情報です。実際に漠然とニュースを見るのでなく、「プラスチック製ストローが代替されていく流れがあるので、何かビジネスにならないだろうか」ということを意識してみることです。

この場合は、プラスチック製ストロー、代替ストロー、環境悪化の原因などを調べることが資料集めとなります。

アイデアマンを目指すのであれば、これらは常にやっておきたいことですし、クリエイターなどアイデアが必須科目な仕事は常にやっているはずです。

この部分が好きな人はアイデアマンに向いているともいえますね。

2段階:データを噛み砕く(意識)

資料集めの段階で気になったことをメモしていきます。

例えばプラスチック製ストローの環境悪化という点はプラ製自体のゴミ量は微々たるものだけど、それが生物の餌になるとかなりまずいというようなことが気になったとします。

こういうのをメモしておいて、丁寧にそれはどういうことか?を考えていきます。これを咀嚼(そしゃく)といっていいでしょう。考えや気づきをメモするイメージです。気づき=咀嚼ということですね。自分の考えを入れていればオッケーです。

もっと違う言葉で言えば、資料集めはテーマ性はあるデータが集まるけれど、それぞれはバラバラのデータに過ぎません。少なくとも、プラ製ストローのことと、代替ストローはストローという意味では共通していますが、例えば他の環境悪化原因を改善した例などは考え込んでいかないと見つかりません。

また解決策として代替品でなく、革新的なプラスチック製ストローを作れないかというアイデアもありでしょう。出来るかはおいておいて。

このように集めたデータを1個ずつ、文字通りちまちまと考えていくこと。または捨てることで、吟味していくことがこの段階です。

3段階:組み合わせる(無意識)

咀嚼したデータを考えていく中で、こうやったらいいのではないかをデータとデータを組み合わせていきます。データと思いついたアイデアでもいいし、先程あげたような他の環境悪化原因を解決した事例があればそれを使えないかなどです。

無意識と書いていますが、実際は意識と無意識が交差している段階です。

意識的に組み合わせただけでは多分良いアイデアは出ないはずです。なぜなら意識的なものだと「表層」レベルの組み合わせになりやすいからです。例えば、単語レベルでの組み合わせなどです。

「ストロー」×「代替する」=「何かアイデア」

「何かアイデア」に出てくるのは瞬間芸であり、瞬発力であり、それ以外はなかなか生み出せません。

無意識というのはストローでも色々あるし、代替といってもどう代替するのかということを深く考えるイメージです。

意識的に組み合わせる。そして無意識で深堀りしていくイメージです。

意識できるのは、これとこれを組み合わせたらどうかだけです。無意識というのは、それらの組み合わせの結果の余韻があって、そのまま脳が考え続けるモードになるという感じです。

4段階:ひらめく(無意識)

ひらめく行為は無意識です。ですが、ひらめいて出てきたアイデアは意識的に拾えます。

3段階目の組み合わせをやっていくと、脳が疲れてきたり、よく分からなくなったり、そういえば何をやればいいのだっけということになります。または解決策などないのではないか、自分はとても滑稽なことをやってないか(笑)など不安になります。

そういう段階を踏まえて、例えば寝てしまうとか、散歩しようとか、違うことをするとこの「ひらめく」が起きたりします。

大事なのは、寝ればひらめくという「部分的引用」でなく、1段階から通して来たからこそ、長いトンネルを歩いてきたからこそ「ひらめく」わけです。

組み合わせ、ひらめくの段階は無意識モードがほとんどを占めているので、僕は勝手にオートモードと呼んでいます。このオートモード自体は意識してないので疲れないですが、とはいえアイデア自体が「出てこない」ので焦ります。

この考えても出てこない状態は、学習しても成績が上がらないプラトー(凪)のようなものに似ています。考えても組み合わせても調べても出てこない。ピクリとも発想の神様は出てこないわけですが、ある日突然やってきます。

しかし、このある日とはいつかは誰も分からないわけです。とはいえ、自分の脳というか頭を信じてもらうしかないです。考えるのをやめて、1日、2日など何事もなかったかのように振る舞うといきなり来ますから。これこそ無意識のオートモードが普段の生活の中で必死に水面下で動いている状態といえます。

5段階:検討する(意識)

ひらめいたアイデアは当然メモしてください。

そのアイデアを今度は検討します。検討とは、プラスチック製ストローの話であれば、代替品として適切だろうかとか、環境問題解決になるだろうかなどです。

1,2段階ではテーマをもって資料を集め、咀嚼したデータがあるはずですが、その時に問いをうっかり忘れていたり、冷静に見直すと全く関係ないアイデアであることもよくあります。

3段階の組み合わせにおいてすぐ出てきたアイデアを検討することはやめたほうがいいでしょう。それは表層レベルであり深い気づきのアイデアにならないからです。つまり長いトンネルをくぐらせる必要があるということですね。短いトンネルだと駄目ということです。

慣れないうちは上から順にやる

アイデア出しに慣れてない人は、まず1から順にやってみてください。多分、3段階の組み合わせと、4段階のひらめきあたりで、何か見つかるわけですが、そこまで我慢して資料集めとデータ咀嚼をできるかどうかです。

ちなみに資料集め自体は当然自分が知っている分野であれば省略できるし、再確認になりえるので効率的です。ですが、データの咀嚼や1個ずつ考えることは省けません。これらのちまちまやる行為は、意識的には「面倒」かもしれませんが、無意識レベルに落とし込むには必要な行為なのだろうと感じます。

それくらいしないと寝ている間に勝手に考えるみたいなことができないし、休んでしばらくしたら「ひらめく」ことにならないだけです。

この5段階のプロセスを短くするのはわりと賢い発想です。ただ、人の頭の速さとか、無意識と意識の話とか、考えるとか咀嚼とか、組み合わせるということが人によって顕著な違いがあるとは思えません。天才的な例外な人はおいておいて。

慣れている人はまずこの記事を読んでないはずです(笑)

今回得られた気づき

再度読むことで今回気づきとして以下のようなことを感じました。

意識する時間より無意識に頼る

5段階のうち、3,4段階の2つは無意識がメインです。組み合わせ自体は意識的にしているけれど、多分意識できるパターンはめちゃくちゃ少なくて、連想したり、勝手に紐付けるほうが膨大だと言えるからです。

だから、意識できることは、1,2段階なのでここを丁寧にやるしかないと。そのうえで、あとは任せた!といって無意識に頼りましょう。

なーに、きっと良いひらめきを出してくれますよ。

A×Bの組み合わせ法の違和感

2つの組み合わせは3段階でやっていました。ただ、同時に単語だけを並べて、さあ何を思いつきますか?思いついたものを書いてねという発想の仕方があります。

が、これは瞬間的であり瞬発的にアイデアは出てくることもありますが、多くは軽いパンチでありきっかけに過ぎないところです。むしろ、リミッターや固定概念を外すワークとしてはよく、ストレッチとして伸びる感じはします。が、疲れます。

実際にこれは「意識的な行為」です。ですから、深堀した、関連性がある、多層に重なるみたいなものはちょっとつらい気がします。

この単語組み合わせパターンだと、連想資源を使って出てくるものをまるでデータベース問い合わせ(SQL)みたいに出してくるだけです。連想データベース結果はこれというところにおいてグッドですが、無意識に頼る、インサイトみたいな洞察的なことがこの段階で出るわけではないだろうということです。

整理すると、

  • 単語の単純組み合わせ手法は連想データベースに問い合わせた結果が瞬発的に出る(または出ない)
  • 表層的でない、洞察や深い視点、練ったものは無意識に頼る必要があり、その上で出たひらめきは全く瞬発的なものとは異なる

ということです。

前者を瞬発的アイデア出しとすると、後者は洞察的アイデア出しとなります。前者が向いているのは、頭をほぐすためのウォームアップやリミッターを外してブレスト前の体操でしょうか。

ただこれを集団でやったりするとまた知見が異なるので印象は異なりまる。グループの中でだれかが言った「瞬発的に出てきた」ものが、実はその人が考え抜いてきたものだったりするからです(笑)

後者は、深掘りやインサイトなど本質的なアプローチであったり、アイデアを出す時に有効です。

当然、前者は疲れますが意識的に頭を使った疲れなので、意外に疲れるけれど軽い。疲れの質が異なるという感じです。後者は無意識レベルで考えるのが主なので、頭を意識的に使った疲れでなく、勝手に疲れるみたいな感じでしょうか(笑)

ここで思ったのは、そもそも単語組み合わせ法のようなもので出てきたものってうまくアイデアになりえるかということです。なぜなら連想データベースであるものをアップデートしたり、相当期間経ったり、興味がわりと変わらないと結構変わらないというのもありますから、やはり瞬発性ではあるが軽い感じがします。(それこそ数分に何十個もでるアイデア)

後者は数日はかかるけれど、一発一発が重い。数日で数個です。

解説も面白い

本書は、解説部分は竹内均氏が書かれていますが、本文60ページ程度に対して、解説は20ページです。訳者あとがきは10ページ程度。

その解説部分で、仕事をしていく際に、文章を1日10枚(原稿用紙1枚400字で)は書こうとしたくだりの話が面白かったです。1ヶ月は30日あると、1ヶ月で300枚で12万字書くことを課した話です。P.84あたりに書かれています。

この積み重ねを二十数年間やってきたので、一生で280冊の本を書くのはたやすいという話をしています。ライフハックっぽくて面白いので、解説も丁寧に読んでみてください。

実際にアイデア自体も考える時間を確保して、何個か決められたアイデアを出したり、プランを練ったりすることで、結構できることは広がる気がします。課したことをやりきるとなると話が別かもしれませんが、アイデアの出し方は実はそれぞれの人が独自で生み出したものもあるはずなので興味深いなあと感じました。

原作者は真似できる人は少ないと言い切っている

今回のアイデアの5段階は、本書に書かれているものです。今回は僕の解釈がかなり入っていますが(笑)

原作者であるジェームス・W・ヤング氏はこういったアイデアノウハウを公開しても問題ないのかという問いに対して、こう述べています。

 自分でみつけだしたこの貴重な公式をなぜ私が惜しげもなく公表するのかとおたずねになるなら、この公式について私が経験から学んだ二つのことを諸君にうち明けよう。

 第一は、この公式は、説明すればごく簡単なので、これを聞いたところで実際に信用する人はまず僅かしかいないということ。第二は、説明は簡単至極だが実際にこれを実行するとなると最も困難な種類の知能労働が必要なので、この公式を手に入れたといっても、誰もがこれを使いこなすというわけにはいかないということである。

 だからこの公式は、大いに吹聴したからといって私がくらしをたてている市場にアイデアマンの供給過多が起こるというような実際上の危惧はまずない。

(P.18-19 「アイデアのつくり方」ジェームス・W・ヤング著より引用)

いやーこう言い切ってしまっているのがしびれました。これを見た時僕はならばより学ばねばと思った次第です。

確かに複雑に考えることはなく、簡単にいえば、データ集めて考えて、色々組み合わせて、寝かせればひらめくよということです。くどいですが組み合わせ自体は適当な単語を表層的でなく、データを咀嚼したものでしっかりと当てていく感じでしょう。

最初から誰もがさくっと出来るわけじゃありません。僕もそうです。慣れてくるとまた違ってきますし、ぐるぐるこれが回っている感じが僕は好きですね(笑)

実際にアイデアはこうやって出せますといって学ぶ人はかなり限られている気がします。アイデアのつくり方から学んだノウハウを持って何かアイデアの出し方を教えますというのはありでしょう。ただかなり限られるからこそニーズがニッチすぎるのだと思っています(笑)

おわりに

今回紹介したアイデアのつくり方はこちらから購入できます。

本書は60ページ程度でさくっと読めるので、僕のちまちました解説はいらない(笑)ならぜひ本書をさくっと読んでみてください。

また気になった発想プロセスや気付きがあればぜひぜひ教えてください。アイデア出しに関する知見は共有させてもらえれば嬉しいです。

組み合わせのあたりの解釈が若干ぶれていた気がしますが、まあ組み合わせることでしかアイデアが出ないのは事実です。ただ意識的かつ単発に単純にやるのでなくということですね。

以上、アイデアのつくり方の紹介でした。アイデアをどうやって出したらいいか、本で学んでみたい人はまず買って間違いなしです。

筆者プロフィール

シゴトクリエイター 大橋 弘宜
シゴトクリエイター 大橋 弘宜
「シゴクリ」運営者。アイデアの力でお客様に貢献するゼロイチ大好きアイデアマン。ビジネスアイデア相談実績等は200超を超える。好きな言葉は三方良し。詳しい自己紹介仕事実績も合わせてご覧ください。お仕事メニューお問い合わせはお気軽にどうぞ。

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