AIシンドローム

1 あらすじ
2 本文

あらすじ

AI依存症に陥ったユウトは、公園でケンダマ遊びを見て昔の自分を思い出す。シンク・クラフトマン達との出会いを通じ、AIに頼らず思考する喜びを取り戻し、彼自身も新たな道を歩み始める。

本文

近未来の日本では、AIが生活のあらゆる面で浸透し、人々の思考や判断を代替することが当たり前になっていた。人々はAIに依存し、思考や決断をAIに任せることで快適な生活を送っていたが、その一方で「AIシンドローム」（AI依存症）と呼ばれる現象が問題となっていた。

ユウトは、典型的なAI依存者だった。眼鏡がないと生活が不便なように、AIがなければ思考が停止してしまう。彼の一日はAIの指示に従って始まり、AIの判断に基づいて終わる。今日履く靴下の色から仕事の進め方、ランチのメニュー選びまで、すべてがAIの手中にあった。

ある日ユウトは、AIがメンテナンスのために一時的に使用不可になるという事態に直面した。AIの指示なしでは何もできないため、パニックに陥った。「ボクはどうすればいいのだ？」とつぶやきながら、家を離れ散歩に出かけた。その先の公園では子どもたちがケンダマで楽しそうに遊ぶ光景が目に入った。とても楽しそうで、面白そうだ。

ユウトは昔、自分もケンダマで遊んでいたことを思い出した。最近のネットニュースで見た「シンク・クラフトマン」という、AIに頼らず自分の頭で考え、手を動かす少数派の人々の存在を。思考を楽しみ、伝統的な遊びや手作業を重んじている人達だ。

シンク・クラフトマンたちがどこにいるかを調べ、彼ら彼女らが集まる場所を訪れた。ユウトを温かく迎えてくれて、フィジカルな遊びや手作業を教えてくれた。初めはぎこちなかったユウトも、次第に自分の手で何かを作り出す楽しさを思い出し、AIに頼らず自分の頭で考える喜びを取り戻していった。

ユウトは再び公園に戻り、前見た子達とは全然違う小さな子どもたちと一緒にケンダマで遊び始めた。一緒に技を競い、がむしゃらに楽しんだ。その瞬間、ユウトは感じた。AIに依存することなく、自分の力で考え、動くことの素晴らしさを。

その後ユウトは、自分も「シンク・クラフトマン」として、新しい道を歩んでいくことを決意した。AIの便利さを全て捨て去るのではなく、必要な時に適度に活用しつつ、自分の思考と手作業を大切にするバランスを見つけていくことがボクの仕事だと。

今日では、「シンク・クラフトマンユウト」という名を世界で知らない人はいない。AIシンドロームの克服に最も貢献した人として名が刻まれている。彼の姿を見た人が、またはその話を聞いた人が、自分の頭で考え、自分の手で作り出す楽しさを見つけていくのだろう。あなたもその一人かもしれない。